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楽園の他所者 Stranger in Paradise [歌・詩 ]

煉獄や天使について考えていたのと、歌詞に出てくる "hang suspended" がサミュエル・ピープスの日記の処刑の記述と不気味に響きあったせいかわかりませんがw、トニー・ベネットの歌唱で有名な "Stranger in Paradise" を聞いています。

   ギリシアのピアニストの chopenistis さんの投稿映像(歌は Vasiliki Bratsou さん)――

 
"Stranger in paradise (Kismet)" (2:00): "Δημοτικό Ωδείο Καβάλας 12/6/09
Συναυλία της τάξης μονωδίας της καθηγήτριας Μαρίας Καρατζά με τίτλο
"Τραγούδια Που Αγαπήθηκαν Μέσα Από Τα Musical"
Music: George Forrest
Lyrics: Robert Wright
Φωνή: Βασιλική Μπράτσου
Πιάνο: Λευτέρης Μισιργής
Κάμερα: Στέλα Μισιργή
Voice: Vasiliki Bratsou
Piano: Lefteris Misirgis
Camera: Stela Misirgi"

   "Kismet" というのは1953年ロサンゼルス初演のミュージカルのタイトルです。1911年にロンドンで初演された Edward Knoblock (Edward Gustav Knoblauch, 1874-1945) の芝居 Kismet: An "Arabian Night" in Three Acts を、Alexander Borodin の曲を使って Robert Wright (1914- ) と George Forrest (1915-99) のコンビが詞をつけてミュージカル化し、それがさらに映画化もされました。 

  エドワード・ノブロックというのはニューヨーク市生まれのドイツ系移民ですが、イギリスに帰化したので、英国の劇作家・小説家とされているようです。Kismet (キズメットあるいはキスメット)というのは、Fate とか Destiny を意味するアラビア語に由来するトルコ語・ウルドゥー語だそうで、辞書には《イスラム》アッラーの意志;運命,天命,宿命 などと書いてあります。

  ロシア五人組のひとりであったアレクサンドル・ボロディン (1833-87)の『イーゴリ公』(1869- 未完; 没後1890完成 Prince Igor )におさめられた「韃靼人の踊り」が "Stranger in Paradise" の音楽です。(『イーゴリ公』の映像(訳詩つき)はこちら <http://www.youtube.com/watch?v=ChoRfYn5qP4>)。ボロディンは東スラヴの叙事詩『イーゴリ戦記』をもとにしたのだそうです。ということでアラブやスラヴやアジアやヨーロッパが、東方と西方が、混交して現代にまで至っているのかなあ、としじみ、いやしみじみするクリスマスの日。

 "Stranger in Paradise"

Take my hand,
I'm a stranger in paradise,
All lost in a wonderland,
A stranger in paradise.
If I stand starry-eyed,
That's a danger in paradise,
For mortals who stand beside
An angel like you.
I saw your face
And I ascended
Out of the commonplace
Into the rare!
Somewhere in space
I hang suspended
Until I know
There's a chance that you care.
Won't you answer the fervent prayer
Of a stranger in paradise?
Don't send me in dark despair
From all that I hunger for,
But open your angel's arms
To the stranger in paradise
And tell him that he need be
A stranger no more.
(私の手を取ってください
私は楽園の他所者
不思議の国ですっかり迷子になった
楽園の他所者。
もしも私が夢見るようなまなざしをしているなら
楽園でそれは危険なこと
あなたのような天使のかたわらに
人間が立っていることは。
私はあなたの顔を見
そして私は上へ昇りました
平凡な世界を抜けて
稀有な場所へと!
宇宙のどこかで
私は宙吊りになっています
あなたが好いてくれる運があると
私が知るまでは。
楽園の他所者の
熱い祈りに答えてくれませんか?
私が渇望するすべてから
暗い絶望へと送らないで
あなたの天使の腕を広げてください
楽園の他所者に
そして彼に告げてください
もう楽園の他所者ではないと。)

"starry-eyed" は文字通りには「星のような目をした」ですけれど、idealistic とか romantic とかさらには naive とかいう意味で、OED を見るとマーガレット・ミッチェルの『風と共に去りぬ』の24章がいちおう初例となっています(いちおう、というのは "starry-eyed という言葉自体は2番の「転義」「比喩」のほうにいちおう1928年の "starry-eyed sympathy" というのがカッコつき――不確実という含み――だけど挙がっているからです)――"She had never stood starry-eyed when the Stars and Bars ran up a pole."  "Somewhere in space I hang suspended" と合わせて考えると、天空の星のイメジなんでしょうか。星になっちゃったのかなあ。いやちがうw。地上のラヴソングですよね。
 


"Hedy Lamarr (Stranger In Paradise)" (3:16), posted by "Muirmaiden"

 

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2009年12月27日付記

おまけの先に派生した記事――

「"Stranger in Paradise" の不思議な日本語訳 A Stranger Translation of "Stranger in Paradise"」

「ミュージカル『キスメット』のなかの "Stranger in Paradise" "Stranger in Paradise" in the Musical Kismet (1953)」


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コメント 1

morichanの父

xml_xsl さま、ナイスありがとうございました。音楽関係のことをもっと書けるといいのですが、自縄自縛的です。ご活躍を念じつつ。


by morichanの父 (2010-01-08 22:51) 

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