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千本足――脚の話 (4) Thousand Legs: Leg Stories (4) [Daddy-Long-Legs]

詩脚と歩格の話のつづきはまだまとまっていませんが、ムカデの話の基のところに戻って説明をすることがありました。「脚の話 (1)――百足図 Leg Stories: Centipede Pictures」で書いた、「ムカデとの和解はなぜ起こったのか(理由)」という疑問の答えです。1年生の春には、嫌悪していたムカデと2年生の5月にはお茶しているのはなぜか。

  それは、ひと月前の4月11日の手紙にヒントがあるのではないかと考えます。その手紙は、前日の4月11日に、"Dear Mr. Rich-Man" 宛てに50ドルの小切手(これは都会のニューヨークに出た興奮から、どれでも好きな帽子が買えたら、、とかその前の手紙でジュディーが書いたのにあしながおじさんが反応したものです)を突っ返して、自分は物乞いをしたのではない、必要以上の慈善なぞごめんだと書いた手紙を投函してしまった、そのことを反省して書いたものです。――

                                           11th April

Dearest Daddy,

Will you please forgive me for the letter I wrote you yesterday?  After I posted it I was sorry, and tried to get it back, but that beastly mail clerk wouldn't give it back to me.
     It's the middle of the night now; I've been awake for hours thinking what a Worm I am―what a Thousand-legged Worm―and that's the worst I can say!  I've closed the door very softly into the study so as not to wake Julia and Sallie, and am sitting up in bed writing to you on paper torn out of my history note-book.
     I just wanted to tell you that I am sorry I was so impolite about your cheque.  I know you meant it kindly, and I think you're an old dear to take so much trouble for such a silly thing as a hat.  I ought to have returned it very much more graciously.
     But in any case, I had to return it.  It's different with me than with other girls.  They can take things naturally from people.  They have fathers and brothers and aunts and uncles; but I can't be on any such relations with any one.  I like to pretend that you belong to me, just to play with the idea, but of course I know you don't. I'm alone, really―with my back to the wall fighting the world―and I get sort of gaspy when I think about it.  I put it out of my mind, and keep on pretending; but don't you see, Daddy?  I can't accept any more money than I have to, because some day I shall be wanting to pay it back, and even as great an author as I intend to be won't be able to face a perfectly tremendous debt.
     I'd love pretty hats and things, but I mustn't mortgage the future to pay for them.
     You'll forgive me, won't you, for being so rude?  I have an awful habit of writing impulsively when I first think things, and then posting the letter beyond recall.  But if I sometimes seem thoughtless and ungrateful, I never mean it.  In my heart I thank you always for the life and freedom and independence that you have given me.  My childhood was just a long, sullen stretch of revolt, and now I am so happy every moment of the day that I can't believe it's true.  I feel like a made-up heroine in a story-book.
     It's a quarter past two.  I'm going to tiptoe out to post this off now.  You'll receive it in the next mail after the other; so you won't have a very long time to think bad of me.

                           Good night, Daddy,
                           I love you always,
                                               JUDY

(きのうあなたに書いた手紙をどうか許してくださいますか。投函してから後悔し、とりもどそうとしたのですが、いまいましい郵便屋さんがどうしても返してくれなかったのです。
  いま真夜中です。何時間もベッドの中で、自分はなんというムシみたいな人間なのか――ムシケラもムシケラ千本足のムシケラだ――と考えつづけていました――これ以上の悪口知らないです! いま、ジュリアとサリーを起こさないように勉強部屋に通じるドアをそっとしめて、ベッドの上にすわって、歴史のノートから引き裂いた紙に手紙を書いています。
  送ってくださった小切手のことで、たいへん失礼をしてしまい申し訳ありません、とただお伝えしたかったのです。あなたが親切な気持ちからなさったことはわかっています。たかが帽子のようなつまらないものに骨を折ってくださるなんて、あなたはやさしいおじいちゃまなんだと思います。もっとずっとやさしく心をこめてお返しするべきでした。
  しかし、いずれにしても、わたしはお返しせねばならなかったのです。わたしと他の女の子たちではちがうのです。彼女たちはひとから自然にものを受けとることができます。父親がいて、兄弟がいて、おばさんやおじさんもいるのです。でも、わたしは、誰ともそういう関係ではありえないのです。あなたが私の身内だと (you belong to me) いうふりをするのは好きです、ただそう考えて楽しむだけですけれど。でももちろんあなたがわたしの身内ではないことはわかっています。わたしはひとりぼっちなんです、ほんとうに――壁を背にして世界と戦っているんです――そう考えるとわたしはなんだか息が切れてあえいでしまいます。わたしは頭からそういう考えををとりはらって、ふりを続けるんです。でもわかるでしょう、ダディー。わたしが必要以上のお金を受け取れないのは、いつの日か、お金をお返ししたくなるでしょうし、わたしがいくらココロザシどおりに大作家になったとしても、カンペキに度し難い借金にはたちうちできないからなのです。
  きれいな帽子とかなんかはわたしはあればそれは好きです。でもその支払いのために未来を抵当にいれてはいけないんです、わたし。
  無作法なわたしを許してくださいね。わたしにはひどいくせがあって、思いついたことを衝動的に書いてしまうので、手紙を投函してからあとのまつりとなるのです。でも、ときどきわたしが無思慮で恩知らずに見えても、決してほんとうではないんです。心の中では、いつも、わたしに人生と自由と独立を与えてくれたあなたに感謝しているのです。わたしの子ども時代は、ただ長く、むっつりした反抗の連続にすぎなかった。でも今、わたしは一日の一瞬一瞬がとても幸せすぎて、ほんとうのことだと信じられないくらいです。物語の本のなかのつくられたヒロインみたいな気持ちです。
  2時15分です。いまから忍び足でメールシュートまでいってこれを投函します。先の手紙のすぐ次の便で着くでしょう。ですから、わたしのことを悪く思う時間はそんなに長くはないでしょう。
                  おやすみなさい、ダディー
                  大好きです       ジュディー)

  この手紙はたぶんここまででいちばんマジな手紙で、泣けるところもあって、つい全部訳してしまいました(適当な日本語ですけれど)。

  足の話はどっかへ頭から飛んでしまいました。

    ではマタあしたに。

///////////////////

つづきです――「千本足パート2――脚の話 (5) Thousand-legged Worm, Part 2: Leg Stories (5)

前の記事です――「脚の話 (1)――百足図 Leg Stories: Centipede Pictures」「ムカデの生態 Centipedes」「脚の話 (2) ――詩の歩格や詩脚についてムカデのむこうに透視するの巻の上 Leg Stories (2): Foots, Meters, and Centipedes Pt.1」「脚の話 (3) ――詩の歩格や詩脚についてムカデのむこうに透視するの巻の中 Leg Stories (3): Foots, Meters, and Centipedes Pt.2


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morichanの父

kaoru さま、おはようございます。
いつもすみません。
感謝と共に
by morichanの父 (2010-01-27 09:30) 

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