シルバニアファミリーのものほしセット――拝啓クローズ・ポール(着物柱)様、パート2 Dear Clothes-Pole, Part 2 [Daddy-Long-Legs]
Jean Webster, Daddy-Long-Legs (Century, 1912), p. 22
(でもジョン・スミスなんて呼ばれることを望んでいるひとに、どうして「かしこ」まったりできるでしょう。どうしてちょっと個性のある名前を選びだせなかったのでしょうか。これではまるで拝啓馬繋ぎ柱 (Hitching-Post) さまとか拝啓物干し柱 (Clothes-Pole) さま宛てに手紙を書いているようなものです。)
Mizumoto Machine Mfg. Co. の英語ページは、アルミ・チェーンの使用として、「物干しざお(ひも・ロープ)のかわりとしても」 "As the substitute of a clothespole" としてますけれど、「ひも・ロープ」はclothespole とは呼ばれないと思います。<http://www.mizumoto-mm.co.jp/chain/CH08_.html>
つぎの、100年前の写真はどうでしょう。
"Linen on a Clothespole Flaps against Funeral Sculpture - 1905 -" Crédit photo: © Alvin langdon Coburn - George Eastman House Foundation, image via Edimbourg vu par Alvin Langdon Coburn - Partie 2 | Saint-Sulpice <http://saintsulpice.unblog.fr/?p=2037> (Cf. George Eastman House Alvin Langdon Coburn Series <http://www.geh.org/fm/coburn/alcoburn/m196701430037_ful.html#topofimage>)
『埋葬の彫刻を打ってはためく物干し柱のリネン』 (1905)。この写真、見たことがあるようでいて、たぶん知りませんでしたが、住宅に近接した墓所の、紋章の入った重厚な墓石と、日常の卑近な生活を示す物干し柱にはためく布の対照が、死と生の交わりみたいなものを(あるいは逆に皮肉な近接を)あらわしているのかと思います。写真家のアルヴィン・ラングドン・コバーンについては、別の関心がフツフツと沸いていますので、別の記事で書こうと思います。1905年というとコバーンはロンドンに住んでいたので、イギリスの風景だと思われます。
そうなると、シンガポールの、窓から突き出た竹ざお(bamboo poles)の物干し竿も、たぶん clothes pole と呼ばれうるかも――"Hock Lam Street, 1950s" ( (c) National Library Board Singapore 2009)<http://www.flickr.com/photos/snapsg/4111408768/>。
そうなると、(どうなると?)日本の物干し竿も clothes pole と呼んでいいのでしょうかね。
海外進出しているシルバニア・ファミリーの clothes pole set ――
Dolls Inc Ptz Ltd <http://dollzinc.com/catalog/product_info.php?manufacturers_id=30&products_id=2001&osCsid=da36b6b22223b5c1d0aae9cf0ae334dd>
7.48ユーロ。このとき "pole" はどれを指しているのかしら。
image via おぢいさんの店 <http://www.bidders.co.jp/item/41751238>
シルバニアファミリー 家具シリーズ【カー610 ものほしセット】エポック社 (C)EPOCH CO.,LTD.
この箱は、最初見たのは、ebay のオークションの画像で、「ものほし」のあとにシールが貼ってあって見えず、オリジナル日本語はなんなんだろう、と気になっていた(その画像は行方不明、見つかったら報告します――せんでええ、せんでええw)のですけれど、「ものほしセット」という、「もの」よりは「ふるまい」に力点を置いた名称なのでした。うーん。「ものほし」はモノだか動作だか、あいまいですか。むしろ前者か。モノ売っているんだからモノですか。
ebay で「そうしきセット」かと思ってしまったセットは、英語でも "Vacuum Cleaner Set" ですので、セットによりけりかもしらんけど、「そうじ」ではなくて「そうじき」とモノを指す商品名なのかしら。。なーむー。――
ところでしかし、「ものほしセット」は、アメリカの店では "Clothes Line Set" の名称で出ていました。――
Tama Boutique <http://www.tamaboutique.com/sylvanian_clothes_line.html>
付属部品一覧は、
でした。
下から2つ目の "clothes pin" (clothespin) というのは、「干し物留め」「洗濯ばさみ」で、イギリス英語で "clothes-peg" と呼ばれるとされるものです。上から2つ目の clip は、画像でシーツをはさんでいるものだと思うのですが、じゃあ、洗濯ばさみはどこに? あー、タオルをはさんでいますね。上から7つ目の "drying rack" というのは、ここでは、タオルを掛けてある、十字型のモノのことでしょう。あと、「はたき」だと思うのですけれど、"rag beater" というのが2つあります。ひとつは、先端が割れていて、なんだか、先の記事で見た先割れ棒(もしかすると clothesprop?)に似ているのが気になりますが、ともかくじゃあ、 "clothes line pole" x 2というのはどれ? 棒と台はどう区別されておるの????
ここで、エポック社のホームページを調べました。ちゃんと「シルバニアファミリー公式ホームページ」がありました。そして、「しょうひんカタログ」見ると、ありました、ありました。「ものほしセット」 <http://sylvanian-families.jp/catalog/furniture/1159363477831837.html>――
image via エポック社、シルバニアファミリー公式ホームページ
どうやら、このホームページの画像を左右反転させたりなどしてお店は使っているようです。
そして、じゃじゃーん、「セット内容」――
「セット内容」 image via エポック社、シルバニアファミリー公式ホームページ
残念ながら、部品の名称・個数の記述がないのです。が、洗濯ばさみ系は2個ずつしかないようです。洗濯ばさみは「はさみ」が "a pair of scissors" と呼ばれるように、あるいはスリッパ1足(まあ、日本風にはサンダルだと思われますが)が (a pair of) slippers といわれるように、4で2とか2で1みたいなことになるのかしら。
そうなると、"Two Clothes Line Poles" が「物干し台」と「物干し竿/綱」の両方を指していることになるのですが。
うーむ。むつかしいです。
いずれにしても、基本、洗濯物をかけるのに、ロープを使うのと、棒を使うのとで、文化的・風土的に別れていて、それゆえに、英米で clothespole というと、日本風の「物干しざお」ではなくて、「物干しざお」に替わる「物干し綱 (clothesline)」を張る、基本一対の柱のことを指してきたのだと思われます。
シルバニアファミリーのものほしセットの海外普及によって、物干しの概念が変わるか否かはわからんです。
「イメージ画像」 image via エポック社、シルバニアファミリー公式ホームページ
このイメージ画像を見ると、Y字型の棒は、布団を叩くというのではなくて、物干しざおを降ろしたり掛けたりするのに使われているように見え。そしてY字型は clothesprop の形状ではないの? 謎は解決せず・・・・・・。これでは(シルバニアファミリーにおいて) clothespole が三つに分裂しております。(1) 日本的な物干しざお、(2) その物干しざおを指示する一対の台、(3) 物干しざおなり干し物を引っ掛けるらしい股割れした棒。
う、まだ続くのか・・・・・・。
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「5396 物干し動作に適した竿高さに関する官能評価 : バルコニー空間の適正寸法に関する実験的検討その1(機器・設備,建築計画I) [in Japanese] Preferred height of laundry pole in clothes-drying place. : Optimal Dimensions of Balcony Part 1. [in Japanese] 」 <http://ci.nii.ac.jp/naid/110006675601/en> 〔日本建築学会大会学術講演概要集(東海) 2003.9 CiNii CiNii Fulltext PDF "laundry pole" というふうに「物干しざお」を呼んでいます〕
シルバニアファミリー公式ホームページ <http://sylvanian-families.jp/> 〔エポック社内〕
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