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建物の向き (2)――建物の向きの指示は大学向きだったっていえるのかい Direction(s) of Buildings (2) [Marginalia 余白に]

昨晩ののつづきです。

  本、見つかりました。Karen Van Lengen and Lisa Reilly, Vassar College: An Architectural Tour (New York: Princeton Architectural Press, 2004).  引用します。――

The positioning of the campus's first structure, Main, was controversial.  Vassar had wanted to align it with Raymond Avenue but President Jewett convinced him that placement along the cardinal points would serve as an "educating force," and so Main was oriented directly west, toward, but not in view of the great Hudson River.  This early decision to place the college within its larger geographical context was to remain an important force in the future development of this section of the campus, associating the college with its larger habitat―the Hudson River Valley.  All of the buildings located on the flat plain near Main follow this initial alignment.  Later, as the college expanded, building along the Casperkill and Fonteyn Kill would be located in relation to the local landscape, rather than on the established axis, and their siting would follow the topography of the creek beds.  These two contiguous systems are today seamlessly joined by the landscape plan that has evolved incrementally and has been largely created by the Vassar community itself.  (30)
(キャンパスの最初の校舎、メイン(本館)をどの場所に置くかについては議論があった。ヴァッサーはレイモンド・アヴェニューの通りに沿うように望んだが、ジュウェット学長は、方位にあわせて建てることで「教育の力 educating force」として作用するとヴァッサーを説得した。結果、メインは真西を向くこととなり、ハドソン河のほうを向いてはいるけれども河が見える位置にはない。大きな地理的コンテクストに大学を位置づけるというこの最初期の決定は、その後のキャンパスのこの部分の展開に影響力をもって残りつづけることとなった。大学は、ハドソン河ヴァレーという大きな環境と関連付けられたのである。メインのそばの平地に位置する建物はすべてこの最初の配列にならった。のちに、大学が拡充し、キャスパーキルとフォンテイン・キル〔kill というのは、川、水路です〕に沿って建物がつくられたときには、定着した軸線ではなくて、風景との関係で配置されるようになった。つまりクリークの川床の地勢に従ったのである。この2種類の体系は、主としてヴァッサーのコミュニティー自身によってつくられ進展してきた風景計画によって、今日ほころびなく結び合わさっている。)

  ということで、東西南北という方位にあわせた建造と、水系を中心とする自然の風景にあわせた建造が、混在している、ということです。

  このあいだ古いPhotoshop 2.0 が無事インストールできたので、ひまにまかせて色づけしてみました。青いのが後者の建築です。黒いのは東西南北の軸に沿った建物群。ふつうの地図と違って、上が東で左が北です。――

Vassar-AxisPlan,withBuildingsThatFollowtheNaturalTopography.jpg
Figure II, based on the top figure "Diagram of buildings located along the cardinal axis" of page 31 of Vassar College: An Architectural Tour (New York: Princeton Architectural Press, 2004)

  グレーの箇所は川と湖です。メイン・ビルディングの右上にあるのが Sunset Lake、下(西)にあるのが Vassar Lake (元の名は Mill Cove Lake)。ヴァッサー湖と大学のあいだにある広い道が Raymond Avenue です。サンセット湖から北東にのびている川がキャスパーキル、そしてフォンテイン・キルの元の名は Mill-Cove Brook といったので、それはヴァッサー湖とつながっているクリークなのでしょう(自信50パーセント)。ハドソン河はどこにあるかというと、図の下(西)を南北に流れています。下の地図(上が北)だと南北にハドソン河が流れていて、東に大学があります。

 
大きな地図で見る

  目測で、大学からハドソン河まで2マイルは離れていると思われます。

  さて、上に引いた文章でよくわからないのは、創設者のヴァッサーの考えに反対して方位に従った建造を進言した初代学長のジュウェットは、南北に流れる大河ハドソンとの関係で校舎を位置づけたのか(なんだかそういうふうな流れで上の文章は解釈しようとしているように見えます)、それとも、それはそれとして、真西とか真東とか、方位を最重要としたのか(そういうふうに自分は読みたいのですが)、です。ちなみにジュウェットの名を冠した5番目の寮は当初 "North" という名でしたが、図の南北方向(水平方向)の軸の上に、ということは、東西の中心として位置づけられているように見えます。

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The Hudson River Valley, image via "Hudson Valley," Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/Hudson_Valley>

  ☆ ☆ ☆

  建物の方位で、ヨーロッパ文化において伝統的に際立っているのは、キリスト教の教会です。すなわち、祭壇は東を向くように建造され、教会堂の入口は西でした。太陽がのぼる東を向いて礼拝するのは異教の習慣をいれたのだ、という批判(?)がなされうるかもしれませんが、キリスト教会は、「主の栄光は東から」(「エゼキエル書」43章)を典拠として正当化した、とされています。

  はじめ、はじめチャペルがメイン・ビルディング内にあったということと関係するのかなあ、とも思ったのですけれど、ジュウェットのいう「教育の力 educating force」は、どうも純粋に宗教的なものとも思えないような気もします。それとも結局のところ宗教的なものが背後にあったのかしら。

  『あしながおじさん』3年生の4月の末ごろの手紙に、夜明け前に2マイル歩いて山(One Tree Hill 一ツ木山?)に登り、太陽サンサンご来光を仰ぐエピソードが出てきます。ひそかな太陽神崇拝があったのでしょうか(w)。

Daddy-Long-Legs(Century,1912)226.jpg
Daddy-Long-Legs (Century, 1912) 226


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morichanの父

kaoru さまどうもありがとうございました。
by morichanの父 (2010-03-06 11:41) 

morichanの父

couple さま、ご訪問とnice ありがとうございます。よいマンションが見つかりますよう。
by morichanの父 (2010-03-06 11:43) 

morichanの父

pcluxury さま、はじめまして。目がつぶやいてしまいました。
by morichanの父 (2010-03-06 11:45) 

morichanの父

ゆとりOLさま、ご訪問とnice ありがとうございます。自分が異性であったらあこがれたであろうハンドルです(わけわかめです
by morichanの父 (2010-03-06 19:10) 

morichanの父

perl さま、はじめまして。勉強ブログなのですね。よろしくお願いいたします。
by morichanの父 (2010-03-06 19:12) 

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