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錫調理器 Tin Kitchen [Little Women]

『若草物語』の第14章「秘密 Secrets」の冒頭、新聞社に原稿2篇を持ち込みに出かけようとするジョーの様子が描かれているなかに、彼女の屋根裏部屋の文机の記述があります。

Jo's desk up here was an old tin kitchen, which hung against the wall.  In it she kept her papers, and a few books, safely shut away from Scramble, who, being likewise of a literary turn, was fond of making a circulating library of such books as were left in his way, by eating the leaves.  From this receptacle Jo produced another manuscript; and, putting both in her pocket, crept quietly down stairs, leaving her friends to nibble her pens and taste her ink.  (Little Women, Norton Critical Edition, pp. 121-22).
(階上にあるジョーの机は古い錫調理器で、壁に寄せてつけられている。その中に彼女は原稿用紙と、数冊の本を保管して、スクラブル君から安全にしまっておくのだ。ネズミ君はジョー同様に文学的な趣味があって、通り道に残された本の紙葉をかじっては巡回図書館をつくることが好きだったので。この錫の入れ物からジョーはもうひとつ原稿を取りだし、ふたつともポケットにおさめると、友人たちがペンをしゃぶったりインクをなめたりするのに任せて、そっと忍び足で階下に降りた。)

  邦訳をいくつか見ると、(old) "tin kitchen" は「台所用の古いブリキ箱」みたいにだいたい訳されているようです。煎餅用のカンカン(うわっ、「カンカン」なんてことば数十年ぶりに使ったw)とか、あるいは材質は違うけど大きさ的には茶箱みたいなのを想像した(する)のかしら。

  あとからOED を引いて語源について学ぶところあったのですけど、それはマタの機会にして、まずはWEB で得たダイレクトな画像情報を仕留めておきたいと思います。

  まず、正面図――

TinKitchen.jpg
image via “Hearth Equipment” Lyon Iron <http://www.lyoniron.com/hearth.htm>

  そして裏面から――

Tin-Kitchen.jpg
image via “Kitchen UtensilsFree Books / Cooking / Miss Parloa's New Cook Book / <http://chestofbooks.com/food/recipes/Miss-Parloa-New-Cook-Book/Kitchen-Utensils.html>

  暖炉の火の前(50~60センチ前)に設置し、直火ではなくて放射熱で肉を焼く(下部に野菜を敷いたりして一緒に焼いたりもする)器具のようです。中央に回転できる spit というか棒があって、そこにさらに細い spit ないし skewer を刺せる□□□□の穴が間隔を置いてあります(下の図だと6つ)。あと上からも吊るせるフックがついています(下の図だと4つ)。で、棒をときどきまわし、前面部のフタを開けて焼け具合を確認するみたいです。

  脚があって、床に置くのがふつうなのでしょうけれど、壁に掛けようと思えば掛けられそうな取っ手があるので、実際に壁に掛けられていた (hung) のかもしれません。日本人みたいに床に座って書く文机ではなかったのでしょうから。

 

  PS.  最初「ブリキ」と訳したのですけれど、ドノヴァンの「小さな錫の兵隊 Little Tin Soldier」(ママス・アンド・パパスのショーン・フィリップスの作品なのだけれど、元はやっぱりアンデルセン童話なのかしら)を思い出して錫に変えました。


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