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イニシアル(イニシャル) (2) グーテンベルグ聖書 Initials (2) The Gutenberg Bible [モノ things]

新年おめでとうございます。

  師走の「イニシアル(イニシャル) (1) Initials」のつづきです。

  英語の initial はフランス語から入ったのでしょうけれど、もともとはラテン語の initiālis であり、さらには initium = beginning というラテン語が語幹となっているといえると思います。さらに分解すると、やっぱり "in" なのだから、「内へ」「中へ」、そして"ire" 「行く」ということで、「内へ行く」「中に入る」=「はじめる」ということかもしらんけど。直前の記事で秘密結社のことを書きましたけど、新参者=秘儀参入者は initiate ですね。素人の状態は uninitiated。

  ということで、年のはじめのためしにしめたとばかりにイニシアルからはじめようと思っておったのですけれど、19世紀の本の実例を探っている余裕がなくて、いっぽうグーテンベルグ関係のページを10ぐらい開いたままに年越しをしてしまいました。それで、IE が重い感じもするので、とりあえず活版印刷の最初といわれるグーテンベルグの本からつづきをはじめようと思い。

  英語のウィキペディアと日本語のウィキペディアの "Initial" と「イニシアル」がアサッテの方向を向いているのはヘンだと思います。人名の頭文字を initials と呼ぶのは事実ですし、いっぽう、英語のウィキペディアがもっぱら書いているように、古い写本で、そして近代の印刷本でも、パラグラフや文章の最初の文字 (initial letter = initial) を大きくして、しばしば装飾的なものとしたのでした。

  グーテンベルグの活版印刷による最初の記念碑的テクストは聖書でした。――

Gutenberg_bible_Old_Testament_Epistle_of_St_Jerome.jpg
image via Wikipedia "Gutenberg Bible" <http://en.wikipedia.org/wiki/Gutenberg_Bible> : "First page of the first volume: The Epistle of St. Jerome from the University of Texas copy. The page has 40 lines."

  日本語のウィキペディア「グーテンベルク聖書」には「グーテンベルク聖書は一見カラーに見えるが、本文そのものは黒色で単色印刷され、あとから飾り文字と飾り罫が手で書き加えられている」と書かれています。英語のウィキペディア "Gutenberg Bible" のほうが内容がちょっと濃いようですけど、"The first sheets were rubricated by being passed twice through the printing press, using black and then red ink. This was soon abandoned, with spaces being left for rubrication to be added by hand." (最初のほうのシートは、印刷機を2回通し、はじめに黒、つぎに赤のインクを用いることで、"rubricate" された。このやり方はすぐに放棄され、手書きで "rubrication" を加えるべく余白を残すことにした。) と書かれています。"rubrication" というのはヘッダーを色づけして強調することですけれど、もともと "rubrica" はラテン語の「赤」、"rubrico" はラテン語の「赤くする」ですから、朱字が本来です(錬金術の「赤の過程」のrubedo も同じ語源)。

  グーテンベルグ聖書についてのウンチクは、慶應の先生の本もありますけれど、久永光造という愛知県のお医者さんのページが細かくてリンクも豊富で楽しいです――『グーテンベルグ聖書』 <http://www4.ocn.ne.jp/~hisanaga/gutenberg.htm>。・・・・・・あ、なんか似た雰囲気を感じたと思ったら、「半分と四分の三 Half and Three-Quarter Bindings」で装丁について書いたときに触れたお医者さんでしたw。クリニックの周りには、110のプランターに美しい花が咲きほこっています。

  とりあえずウィキペディアの画像は40行で、それは最初期の印刷であって、のちには全ページ42行のものも出るわけですけれど、「イニシアル」が手書きによるもので、本によって異なるのは、同じ40行の大英図書館所蔵のものと比べてみると一目瞭然です。――

紙装とヴェラム装 <http://molcat1.bl.uk/treasures/gutenberg/search.asp> 〔右下の "Vellum copy" の枠の [Compare with paper with paper copy] の右をGO! それぞれ+で拡大可〕

  紙装のは最初のイニシアルの金ぴかの装飾 ("illumination" という)のみならずテクストを囲ってページの余白の枠全体に植物模様が書き込まれています。すばらすぃー。ヘッダーの赤字部分、紙のほうは手書きみたいですね。ヴェラムのほうは・・・・・・テクサス大学本のと微妙に字が違っていますけれど、直したようなあとが残っていて、なんなんでしょう。どれも手書きなのかしら。

  グーテンベルグ聖書はラテン語訳のウルガータを印刷したものですけれど、ウルガータをまとめた聖ヒエロニムス (St. Jerome, 345-420 羅 Eusebius Sophronius Hieronymus) が訳とともに遺した前文を写本は保存して10世紀以上にわたって伝えてきました。最初に載っているのがノラの司教パウリヌス (St. Paul [Paulinus] of Nola, 353-431) に宛てて書いた手紙で、グーテンベルグ聖書の最初に8章にわけられて載っているのでした。で、内容はおいといて、最初のところは Frater Ambrosius と書かれているようです。frater はフラタニティーのfrater で、= brother。アンブロシウスというのはヒエロニムス自身の兄弟というのではなくて、聖アンブロシウス (St. Ambrose, c.340-397) という、ヒエロニムスと並ぶラテン四大教父のひとりですか。父なる神に対して義兄弟ですか。

  ということで F ですな。F の長さがえらく違います。そしてつぎの文字の R も大文字になっていますね。

  で、とうぜんながら、印刷以前の手書きの写本から文字装飾やイニシアルや illumination や rubication の伝統はあったわけで、普通に考えれば、近代の本の印刷の歴史というのは高価な装飾・彩色本から黒インク一色で装飾を落とした大衆に開かれた安価本へと進んでいったわけでしょう。けれど、ウィリアム・モリスみたいな人は15、16世紀の印刷にならうことで手工業的な印刷術=芸術を復興させたのでした。たぶん。

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1月4日夜追記

テクスト Textus の頭の赤字のRublica の部分はたぶんこう書かれています(とりあえず上に載せた図版の文)。――

Incipit epistula sancti ieronimi ad
paulinum presbyterum de omnibus
diuinae histori[a]e libris - capitulum primi.

  ここに聖イエロニムスよりパウリヌス長老への手紙が始まる。聖なる歴史のすべてについて―第1章

ううむ。よくわかりまてん。


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morichanの父

タワーマンションさま、nice をありがとうございます。
by morichanの父 (2011-01-08 18:39) 

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