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天使の奏楽――天体の音楽 Music of Spheres (4) [魂と霊 Soul and Spirit]

ひとつ前の記事で、実質的に自分のことばは二箇所、ほんの数行しかありませんでしたw。

 (1)  「圏域」とは英語にすればsphere であり、宇宙論的には、あるいは世界像としては、「天空層」ということだろう。 ここで、天体の音楽と天使の奏楽・音楽が重なり合うリクツができてくる、のではなかろうか。

 (2) 合唱っつうか、合奏ですかね。

  で、(2) のほうについて、我ながら言葉足らず舌足らずだな、と反省した――とりわけ、ブログをしばらく書いていなかったので、仮想読者に伝え(られ)る情報の幅みたいなものの感覚を忘れてました――ので、つっこまれるまえに、図版の説明として書き留めておきます。

 

 

web_arles_church_st_trophime_door_arch_1.jpg
最後の審判 アルルの聖トロフィーム寺院入口上部 image via Travel by Anna <http://travelbyanna.wordpress.com/category/3b-europe-2012-by-country/france/roussillon/>

 

   

 

[angels-tympanum-]0171.jpg 
天使の奏楽 アルルの聖トロフィーム寺院入口内部弧面 image via Introduction to Saint Trophime, Arles, France (Mary Ann Sullivan 2007)  <
http://www.bluffton.edu/~sullivanm/france/arles/sttrophime/introduction.html>

 ロムバッハのキャプション (p. 111)――天使の合唱 アルルの聖トロフィーム寺院入口内側孤面にある彫り物 1170年頃/天使の一人一人が世界を包む精神圏域である。ここでは内側の孤面に描かれた幾筋かの輪にそれが形象化されている。諸々の圏域は様々の基調音で調律されている。そこには諸圏域の調和にして宇宙の音楽がある。

 

このアルルの聖トロフィーム教会堂(寺院)の正面扉の彫刻は、最後の審判をモチーフにしているわけですけど、上の写真で下部に12人並んでいるのは12使徒(Apostles)です――ミケランジェロの最後の晩餐の並びで書くなら、バルトロマイ(Barttholomew)、アルファイの子ヤコブ〔小ヤコブ〕(James the Less)、アンデレ(Andrew)、ユダ(Judas Iscariot)、シモン・ペテロ(Peter)、ヨハネ(John)、トマス(Thomas)、ゼベダイの子ヤコブ〔大ヤコブ〕(James)、フィリポ(Philip)、マタイ(Matthew)、タダイ(Judas (or Thaddaeus))、熱心党のシモン(Simon)。ヤコブは二人いるだけでなく英語が異なるのでややこしいです。実はタダイもユダで、イスカリオテのユダと区別されるわけですけど、自殺したイスカリオテのユダのあとに加わったのがマティア(Matthias)です。

 どまんなかに居るのはイエス・キリストです。そのまわりに4人というか、4体の翼あるものたちがいます。これは4人の福音書記者(Evangelists)、すなわちマタイ(Matthew)、マルコ(Mark)、ルカ(Luke)、ヨハネ(John)です。彫刻では左上から逆時計回りにこの4人になっています。みんな顔がヘンですけど。ヨハネなんかはeagleになっちゃっているので、他が本のかたちのcodexをもっているところ、彼だけ巻物(scroll=volume)を携えています。でもいちおうそれぞれの福音書(gospel)で、イエスが持っている本とは違うみたい。

  最後の晩餐においてイエスは弟子たちに、「汝ら・・・・・・座位(くらい)に坐してイスラエルの十二の族(やから)を審かん」"You shall sit on thrones as judges of the twelve tribes of Israel"  と言います(Luke 22:30)。12使徒がイスラエル12部族の代表という、ローカルな世界観のように見えますけど、象徴的にとらえるべきなのでしょうし、4とか7とかと並んで時間にかかわるという解釈もありうるのかもしれない。それから「ヨハネ黙示録」のなかに、・・・・・・

  と書いて時間が過ぎて、あれこれ読んでいたら、ウィキペディアのなかに「黙示録のラッパ吹き」という記事があって吹き出しそうになった(うそうそ)。英語版だと "Seven trumpets"。英語のほうの説明には、昔のトランペットは雄羊の角笛(ユダヤの古いらっぱ状の楽器ショーファール shofar)だったと書いてある。

  ということで、彫刻では3人の天使が吹いているのは黙示録の trumpet なのでしょうが、これが「奏楽の天使」や「天使の合唱」へ展開していくのはどういう歴史があったのでしょう。 たぶん中世の教会音楽が関係するんでしょうね。

  天上の音楽(≒ 天体の音楽) ⇔ 教会の礼拝音楽

  天使の合唱 ⇔ 聖歌隊

みたいな、照応関係の夢想、というか祈り。

  奏楽の天使の絵でいちばん好きなのはメムリンクでした。

hans-memling-angel-musicians.jpg
Hans Memling [Memlinc] (1430-94), Angel Musicians (c. 1485).  image via friends of art <http://www.friendsofart.net/en/art/hans-memling/angel-musicians>

 美術部だった高校時代によく眺めた小学館の世界の美術館シリーズでは、確か左から3番目の天使がアップで1ページにおさめられていたと思います。こうやって見ると、顔の向きからして彼女が中心なんですね(彼かもしらんけど)。

 もっとも、これ、5人ずつ左右のパネルに分かれていたはずで、あ、と中央があったんだ、と調べると、合唱天使でした。――

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Memling, Christ Surrounded by Musician Angels  image via Wikimedia <http://commons.wikimedia.org/wiki/File:Hans_Memling_-_Christ_Surrounded_by_Musician_Angels_-_WGA14935.jpg>

  Angel Musicians という日本語のページを見つけた <http://rosa.yumenogotoshi.com/angel_musician-top.html>。(「奏楽の天使」では音楽が流れておりますので、音量にご注意ください)。その中では「父なる神と奏楽の天使」というタイトルになっている。子なる神であるイエス・キリストか、父なる神か、説が分かれているのかしら。いまはベルギー、ブリュッセルの王立美術館蔵だけれど、もとはスペインのサンタ・マリア・ラ・ルへル教会のオルガンの装飾だったそうで、そうでなくともタイトルなどなかったのかも。でも、イエスでしょうね。

 メムリンクは最後の審判も描いていて、これもtriptych と呼ばれる三連祭壇画なのですけど、まんなかのイエスとラッパ吹き天使3名はアルルの教会堂の扉上部彫刻と同じです。そして、左右が(審判の結果)神の国に入る聖人saints と 地獄に堕ちる罪人damned に分かれているのも、実は教会堂の扉左右の彫刻と同じです。

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Hans Memling, Last Judgement, Triptych, Oil on wood, 1466-1473. National Museum, Gdańsk image via Wikipedia

  イエスの下を見るとそこにいるのは大天使ミカエルでしょうけど、ミカエルのまわりの地上の裸の人たちから右は地獄堕ち、左は天国行きへと目は動きます。地獄のうえのほうにもラッパ吹きの天使がいます。

 

 


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