脚の話 (1)――百足図 Leg Stories: Centipede Pictures [Daddy-Long-Legs]
「カリフォルニア時間」というブログを2008年4月に始めたころに、ブログのありようについていろいろ教えを受けた、アメリカ在住の美女が、昨年日本に一時里帰りして、そのときにはじめは大人数で飲んでいたのが、何段もハシゴをして(たぶん5段くらい)、なぜか明け方までつきあってもらって、ふたたびブログのありようを相談させてもらった際に、口から半分は出まかせで、『あしながおじさん』は脚の話である、というようなことを言いました。それと合わせて、『あしながおじさん』における神問題と脚の話がつながる、という予感めいたものを語り、いずれにしてもいずれもぜんぜん同意を得ることなく終わった(まあカラオケで歌った「恋の予感」みたいなものだったし)のですけれど、これから書くから、と無謀な先生いや宣誓をしたような記憶がかすかに罪悪感めいたものと共に残っているのでした(です)。
以上で前口上は終わり。
あ、いや、もう少し書くと、そのときブログについて別に話したのは、自分(モーリちゃんの父)的には、「カリフォルニア時間」を読み返してみると、自分でおもしろいのは、モーリちゃんとのクイズみたいな記事であって、それを書けなくなったいまの「学問」的状況はなんだか自縛的で問題かなあ、ということでした(たしか)。アメリカにいたから書けたということと、(それと同じことですが)生活状況が変わってしまって日常生活を書くと、日本の個人的状況・人間関係があらわになってイヤだな、みたいな。ブログは日記だと規定した自分であったはずなのに。ああそれなのに。
閑話休題(自爆)。
それなりに論理を組み立てたいのですが、まだ思案中w。でも、(1) と書いたからには突き進みますよ、はい。できうるならば自分を崩しながら。
まずはカタイ話ではなく、図から。
8本足のザトウムシ(アシナガオジサン) (Penguin Classics 8) と昆虫のコガネムシに擬せられる理事 (Penguin Classics 41) のあいだに出てくる多本足の存在はムカデです。漢字では百足、英語は同様に「百の足」を意味する "centipede" です。実際にはさまざまな本数のムカデが存在し、100というのは「多数」の意味でしかないのは承知しておりますが、下の引用にあるように、「百本足」という名称にのっとった記述をジュディーはしています。
寮(ファーガスン・ホール)は、建物が古いのと、ツタが壁を覆っているために、いっぱいムカデがいて、学生たちを悩ませているのですが、このときは、手紙を書いているジュディーのそばに天井から落ちてきて、ジュディーとびのく拍子にふたつカップをテーブルから落としてしまいます。叫び声を聞きつけてサリーとジュリアのみならず廊下のむかいの4年生もジュディーの部屋に入ってきて、サリーがヘアブラシ(ジュディーの)でムカデを叩き、マエのほうは死んだけれど ("killed the front end")、うしろの50本 ("the rear fifty feet")はたんすの下へ逃げていきます。
ジュディーは、ムカデを "dreadful creatures" と呼び、ベッドの下にトラがいるほうがまだましだ、とも書きます(Penguin Classics 36)。
これが1年生4月か5月の月曜日。ところが、1年後の5月か6月の木曜日の手紙 (Penguin Classics 72) では、小鳥とリスとムカデと一緒にお茶をしていて、ムカデにむかって、「ムカデ夫人さん、おひとつ、おふたつ?」("My dear Mrs. Centipede, will you have one lump or two?" と言いながらカップをさしだす絵が描かれています。
手紙の本文は短いもので、この絵を導入するダッシュの前に、実験棟から戻ったら、リスがティーテーブルに「座って」ひとり勝手にアーモンドを食べていたことを書き、「天気が暖かくなって、窓が開けはなしなので、こういう種類の訪問者たちの接待をわたしたちはしています――」("These are the kind of callers we entertain now that warm weather has come and the windows stays open―") と記して、あとは上の絵が載っているのです。
now that = since (理由)
"we" と書いてはいますけれど、チャイナ服のように見える服を着たわたし=ジュディーが接待しているのは明らかで、ムカデとの和解はなぜ起こったのか(理由)、がひとつの問題なのですが、それはマタにして、百足図で気になるのは、第一に、頭がでかく描かれていることです。これはムカデの知性を認めたということなのでしょうか? それとも最初の図は、そもそもサリーによって分割されたのちも生き残った半分を描いていたということなのでしょうか? それと付随して、第二に、足の向きの問題があります。第二のムカデ図を見ると、椅子に腰掛けて、垂直に立っている部分は、重力によって、足が下向きになる、ということは考えられますが、椅子の上の水平部分も、足の折れ方は同じ方向です――
(頭 〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈
〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈〈 尻)
そうすると、第一のムカデ図で、左側が頭の側で、右側が尻の側、ということにならないでしょうか。なりますね。ならば、やっぱり頭がなかったのでしょうか? あと、じゃあ、右の端のコックさんの帽子みたいなかたちに丸まっているのは小さい頭ではなくて、何?
はい、数をかぞえました。第一のムカデ図の上半分にある足の数は31本、下半分は34本。
あらためてテクストを読むと、 "It was caused by a centipede like this:" と書かれています。「それ〔叫び声〕は、こんなムカデによって引き起こされたのでした――」。そうすると、この図は半分になる前のムカデだった、と考えるのが自然だと思われます(100に満たないのは、上下の足数が合わないことでほのめかされるように、アバウトな絵だから)。
ちなみに第二のムカデ図では、むかって左側の足の数はおよそ20本くらい、右側は24~25本くらいしかないようです(目が疲れました)。しかし、これが、同様にアバウトさ故なのか、それとも一年前に生き残ったムカデの半分だということを示唆するものかどうかは不明です。
ううむ。これが脚の話で、神問題にどうやってつながるのでしょう(我ながら不安だわ~w)。
kaoru さん、こんばんは~♪
いつもありがとうございますぅ。
by morichanの父 (2010-01-21 19:04)
どうも 美女です
ムカデのことはよくわかりました(最初に聞いたときは朝7時前で頭が働いていなかった)
てかどうやってつながるんですかぁ~?
by shj (2010-01-22 23:18)
Dear shjさま、
あ、美女のところ直さなくてよかったですw。えーとですねー、千本足とワームと義足のシルヴァー・ジョン。二股の神のほうは自分でも暗中模索の手さぐり状態です。
by morichanの父 (2010-01-22 23:44)
ニックさま、ご訪問&nice ありがとうございます。自分もジュディーとジーン・ウェブスターにならって経済学の勉強もせねば、と思っているところです。
by morichanの父 (2010-01-27 14:00)
SORI さま、ご訪問&nice ありがとうございます。辻ぎりのヘビはとても興味深いです。
by morichanの父 (2010-01-28 19:39)