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彼/彼女の、彼(女)の、彼または彼女の、モノ He/She; He or She; (S)he; His/Her; His or Hers; His (Her); His/Hers; His (Hers); His or Hers [文法問題]

『あしながおじさん』3年生6月10日の手紙でジュディーが触れる英語の代名詞問題について――


                                                       June Tenth,

Dear Daddy,

This is the hardest letter I ever wrote, but I have decided what I must do, and there isn't going to be any turning back.  It is very sweet and generous and dear of you to wish to send me to Europe this summer―for the moment I was intoxicated by the idea; but sober second thoughts said no.  It would be rather illogical of me to refuse to take your money for college, and then use it instead just for amusement!  You mustn't get me used to too many luxuries.  One doesn't miss what one has never had; but it's awfully hard going without things after one has commenced thinking they are his―hers (English language needs another pronoun) by natural right.  Living with Sallie and Julia is an awful strain on my stoical philosophy.  (Penguin Classics 105: 太字強調付加)
(これはこれまで書いたうちでいちばんしんどい手紙ですが、わたしは自分がしなくてはならないことを決心したので、あともどりすることはできません。この夏わたしをヨーロッパに送りたいと望んでくださることは、たいへん親切で寛大でありがたいことです――しばらくわたしは欧行の思いに酔いしれました。しかし、あらためて醒めた頭で考えると、これはちがう、と思いました。大学へ通うお金を受けるのを断りながら〔このことばは、2年生の終わりに、食費および授業料を含む2年間の奨学金を受けたことでアシナガオジサンとやりあったことを引きずっています〕、あなたのお金を今度はただの娯楽に使うなんて非論理的なことでしょ! わたしをあんまりたくさんの贅沢に慣れさせてはいけません。ひとはだれも、手にしたことのないものは、なくても不自由することはありません。でも、一度、ひとがこれは生得権みたいに彼の――彼女の(英語という言語はもうひとつ代名詞が必要)――ものだと考えはじめたあとではそのモノなしにすごすのはすごくしんどくなります。サリーやジュリーと一緒に暮らすのは、わたしの禁欲哲学にすごい圧迫です。)

  英語に必要な代名詞とはなんでしょう。と問いを進めたいところですが、じつは最初からつまずきます。それは、既訳をいくつか並べてみてもわかることだと思います。――

ですけれど、いったんそれが生来の権利として彼の――否、彼女の(英語は人称別がいりますのね)物であると考えてからですと、そういうものなしで暮らすのはとてもつらいのです。 (遠藤 (1961) 118-119)

ところが、いったん何かを手にいれて、それが当然かれの――または彼女の(英語には、もうひとつ人称代名詞がいりますね)ものだと思いはじめたが最後、それなしでやっていくのは、なみたいていのことでなくなるのです。 (坪井 (1970) 194-195)

けれど、一度、それがじぶんのものになったりすると、それなしでは、くらしにくくなるものではないでしょうか。 (白木 (1970) 147) 

けども一旦それが彼の、彼女の――英語は一々別代名詞が要るんだから厄介ね――ものだと思ふやうになつた後で、さう言ふもの無しに暮さうと思ふともう苦しくつて仕様ががないものよ。 (東 (1929) 177)

  いくつか可能性は考えられると思うのです。

a)  his と書いたけど、hers というもうひとつの ("another") 代名詞が必要とされる。

b)  his と書き、hers と書かねばならないのは不便なので、もうひとつ別の、これとちがった ("another") 代名詞が必要ではなかろうか。

  わからないのは、所有代名詞として one's がないか、というと、あります*。ですから、"One" ではじめたこのセンテンスを one で一貫すれば(一貫するのはアメリカ的といわれますけれど)すんでいたのではないでしょうか?――

One doesn't miss what one has never had; but it's awfully hard going without things after one has commenced thinking they are one's.

  中学校の復習的には、こういうやつです。――

I my me mine
we our us ours
you your you yours
he his him his
she her her hers
they them their theirs

  この、呪文のように唱える代名詞の活用があるわけですけれど、それぞれの最後のやつが possessive pronoun 所有代名詞です。で、

one one's one one's

  ありです*。

  3月19日朝追記。「あります*」「ありです*」、と書いたのは、文法書をひもといて確認したのではなくて、日本語ウィクショナリーの "yours" 掲載の表を見て、ふーん、あったのか、と思ったしだいです――<http://ja.wiktionary.org/wiki/yours> 。 でも「所有格代名詞」(これもうっかりそこからとりました)という呼称も「所有代名詞」という書き方とのあいだで揺れていますし、信頼できるかどうか不安になりました。いずれにしても稿をあらためて考えることにします。

 

  つづく~(解答暗中模索中)

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"Gender-neutral pronoun," Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/He/she> 〔残念ながら対応日本語記事なし〕

"Singular they," Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/Singular_they> 〔残念ながら対応日本語記事なし〕


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コメント 2

morichanの父

ゆとりOL さま、pcluxury さま、perl さま、 kaoru さま、 coupe さま、わけのわからない文章を読んでいただき、nice までちょうだいし、どうもありがとうございます。
by morichanの父 (2010-03-19 20:09) 

morichanの父

couple さま、つづり間違いをして失礼しました(汗)
by morichanの父 (2010-04-15 21:20) 

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