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彼と彼女、彼(女) He or She, S(he) [φ(..)メモメモ]

前のふたつの記事のおまけメモです。 

  英語を中心とするフェミニズム的ジェンダー意識から、たとえば one を he で受けていたのを he or she とか he/ she とか s(he) とかして「両性」化する運動というのは、結局のところ「無性」化ではないので、男女の違いを訴えることになるような気がする(そしてそれはそれでフェミニズム的にはいいのかもしれない・・・・・・違いがなければ平等を訴える必要もないから)。ひとつの問題は、男女の性差があいまいなマイノリティーのひとたちもいて、そこに二者択一的な性差を強調しているように見えることかしら。

  「かの」ということばを誰に対しても用いるというのはどうだろう(文法的にはむちゃくちゃだけど、でもモトカノみたいなかたちで「カノ」は(代)名詞化してるし)、とタワムレに夢想してみたのだけれど、考えてみれば、もともと「かれ」は男女両方とも指す日本語であって、わざわざ「彼女」というコトバをつくって男性を「彼」、女性を「彼女」に分割したのは明治以降のことであるらしい。もっとも、これそれあれどれ的なノリのことばと「かれ」はつながっていただろうから、人間の主体性とか個体主義的な感覚を「彼」が本来もっていたとは思われないし、西欧の文献の翻訳のうえでの必要性というだけでなくて、それと同時に日本が受け入れてきたヨーロッパの近代的個人主義のためには確固とした人称代名詞が必要だったのかもしれない。

  で、いろいろ読んで勉強になりました。メモリマス。

☆「「彼=彼女(かれ/かのをんな)」表現について」 (『言葉と身ぶり』、和井府清十郎さんの『綺堂事物』内 <http://hansichi.hp.infoseek.co.jp/contents/kare.html>)――明治期における3人称表現の変遷について、「かのおんな」が「かのじょ」へ移行した可能性と、「かれ」が女を指す用例など。

☆「彼女より古い彼」 (「エッセイ集」、MARU さんの、現在の日本語の環境の中で育つ子供たちの
言葉の発達について考えるサイト『ことの葉』内、平成14年1月) <http://www.geocities.co.jp/Technopolis/8625/essay5.htm>)――「はっきり主語を示すという、元の言語の性質までは日本ではなじまなかったよう」だし、「個人を尊重し一個の人格として見るという考え方が「彼」「彼女」に見られないこともない」が、「各自の役割が重要な意味をもつ家族関係においては、「彼」「彼女」の出番はこれからもなさそうに思う」ことなど。

☆「彼或は彼女」(Ludwig D. Omen さんのブログ『日常的な、余りに日常的な』2009.7.8 <http://omen.seesaa.net/article/123041988.html>) ――「三人称単数/複数の無性を意味する、或は性別を特定しない様な、新しい言葉が欲しい」。性差別意識と、「「he or she」ではなくて新しい三人称単数の無性形の単語を創ってそっちをプッシュすればよかったのにと思う」ことなど。

☆「かれ - ウィクショナリー日本語版」 <http://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%8B%E3%82%8C>
☆「彼女 - ウィクショナリー日本語版」 <http://ja.wiktionary.org/wiki/%E5%BD%BC%E5%A5%B3> ――「西欧語の三人称女性を翻訳するのに案出された語か」(語源)。

☆「正しい日本語~彼氏彼女編~」 (ブログ『ゾフィーの世界~背中に迫るあの声に振り向かずにGAROL~』2010.1.27 <http://ameblo.jp/hanafusa-prdxish/entry-10444229311.html>)

☆「「彼女」と「彼氏」」 (『英文法道場』 2007.12.26 (高2スーパー英語総合II(文法・作文)・第2課のオマケ話)
<http://blog.livedoor.jp/eg_daw_jaw/archives/51226815.html>)――もっぱら英語中心に考えるところが英語教師的かも。

  ところで「彼(女)」という書き方をするのか、というのが気になっているのですが、わかりませんでした。

  前も書きましたが、天使は「無性 sexless」 ということになっていて、でも He とか She で呼ばざるを得ないという不条理があります。

  (23時追記)なんだか日本人として日本語の問題をこそ考えねばならんなあという気が強くなってはいますけれど、とりあえず、ただの知識として、キリスト教の神の3つのペルソナは、「父なる神」 God the Father と、「子なる神」は God the Son、イエスですから息子、そして、しかし、第三の位格「聖霊なる神」がくせもので、霊的なものをしばしば女性原理と結びつける指向があったように思われるところが興味深いのです。それはまたそれで、機会があれば。


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morichanの父

kaoru さん、こんばんは~♪ あたたかくなりました。
by morichanの父 (2010-03-20 22:50) 

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