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100年前のセーラー服 (2) Sailor Suits of a Hundred Years Ago [Just Patty]

Just Patty のテクストで最初の制服についての記述は、第一章の "Reform" (改革)です。冒頭で、これまでの3年間同室でマブダチだった3人組のプリシラとコニーとパティーは、教師の思惑によりバラバラにされてしまい、新たな同室者に対してぐちをこぼしています。直談判に校長たちのところへいくのですけれど、それぞれ精神的な感化を新人に与えてもらいたい、とかなんとか言われます。そのコトバを逆手にとって、3人は、同室の新入りたちをさんざんに悩ませて、結果、同室者たちの懇願により、結局3人は元通りに西棟のすみかに落ち着くことになる、というのが1章です。

  で、途中、こういう一節があります。――

     "We are happy in our work and we dearly love our teachers," chanted Patty, with ironical emphasis, as she rummaged out a blue skirt and middy blouse with "St. U." in gold upon the sleeve.
     While she was dressing, Priscilla and Conny set about transferring the contents of her trunk to her bureau, in whateve order the articles presented themselves―but with a carefully folded top layer.
(「われらは楽し、学びにいそしみ。いと愛す、われらの師の君」 パッティはタンスのなかをかきまわして、ブルーのスカートと、そでに金糸で St. U と学園の頭文字をぬいつけたブラウスを探しながら、皮肉に歌の文句を口ずさんだ。
     パッティが制服に着がえている間、プリシラとコニーはトランクのなかのものをタンスのなかへ、それがどんなふうに置かれようがおかまいなしに移しはじめた。ただし一番上に納めるものだけは念入りにたたんでおいた。〔遠藤寿子訳、ブッキング版『おちゃめなパッティ』〕)

   ボトムは青いスカートで、トップは "middy blouse" と書かれています。ミディーが訳されていないように見えるかもしれませんが、"middy" はもともと midshipman 、つまり、(アメリカの用法だと)海軍兵学校の生徒、(イギリスの用法だと)海軍兵学校を出た見習い将校を指すことばを縮めた、口語の通称というか俗称です。で、ミディー・ブラウスというのはいわゆるセーラー襟(カラー)の服のことを指すようになりました。

Fig-173-Middy-blouse.jpg
Middy blouse image via "Chapter XV. Construction Of Outer-Garments: Middy Blouse; Mannish Shirt" Stasophere [Laura I. Baldt, Clothing for Women: Selection, Design, Construction] <http://chestofbooks.com/business/clothing/Women-Design-Construction/Chapter-XV-Construction-Of-Outer-Garments-Middy-Blouse-Mannish-Shirt.html>

  セーラー服の起源は、もちろんセーラー(水夫・水兵さん)からですけれど、セーラーカラーの水兵服は、1850年代にイギリスで導入されたということになっています(日本語ウィキペディア「セーラー服」、英語Wikipedia "Sailor suit" 参照)。その後のセーラー服の歴史として正しいかどうかわかりませんが、日本語ウィキペディアは次のように記述します。――

イギリスではセーラー服は海軍幼年学校の制服に採用され、その後海軍好きのイギリスの国民性から、子供服として流行するようになった。この流行は19世紀末から20世紀初頭にかけて世界的な物となった。また、19世紀のフランスでは女性のファッションとしてセーラー服が着られるようになり、その後ボーイッシュ・ブームの一環としてヨーロッパ各国やアメリカで女性のファッションとして流行した。

  そして、海軍内では士官は詰襟が一般で、兵がセーラー服なわけでしょうが、詰襟のほうは男子学生服に、セーラー襟のほうは女子学生服に、日本では採用されたということでしょうか。

  で、話を話しのほうに戻して、意気揚々と、西寮、通称パラダイス・アレーの廊下を闊歩する様子を描いたのが、つぎのイラストだったわけです(再掲)。

JustPatty28-29,modified2-1024.jpg
クリックで拡大

The next morning, Patty and Conny and Priscilla, their arms running over with dresses and hats and sofa cushions, gaily two-stepped down the length of "Paradise Alley" while a relieved school assisted at the flitting.  As they caught sight of Miss Lord hovering in the offing, they broke into the chorus of a popular school song:

          "We like to go to chapel
           And listen to the preachers,
           We are happy in our work,
           And we dearly love our teachers,
                Daughtes of Saint Ur-su-la!"
(翌朝、パティーとコニーとプリシラは、ドレスや帽子やソファ・クッションを両腕からあふれおちそうに抱えて、「パラダイス・アレー」を嬉々としてツーステップを踊るように進んでいった。安堵した生徒たちは引越しの手伝いをした。三人はミス・ロードが沖合いを漂っているのを見つけると、いきなり人気の校歌を歌いだした――
      「われらはうれしチャペルに参り
       説教師の教えを聞くを
       われらは楽し、学びにいそしみ
       いと愛す、師の君たち
          聖アーシュラの娘たちを!」

   キャラクタライゼーションなどから考えて、右側で腰を手にして立っているのが主人公のパティー、まんなかが意外と大人のモラルが芽生えつつあるらしいコニー、左側のちょっとハスッパなふうに服装的には見えるのがプリシラだと思われます。

   で、このスカートの上に出しているミディー・ブラウス、丈が長いのが気になったのでした。着丈の短いものしか見たことがなかったので。

Middy-Blouse.jpg
Middy blouse image via "Middy Blouse" Stasophere [Ida Robinson Burtton and Myron G. Burton, School Sewing Based on Home Problems] <http://chestofbooks.com/crafts/needlework/School-Sewing/Middy-Blouse.html>

  長かったのかしら。つーか、日本のおなかが見えるようなのが変なのか。でも長めでもスカートの中にたくしこんではいなかったような(遠い目)。


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Cecilia

このセーラー服の絵、私が中学生の頃の”ツッパリ女子中学生”みたいな感じです。(スカートが長くて!)
昔のセーラー服と言えば、「アリスの服が着たい」という本を買ってイギリスのヴィクトリア朝文学と子供服の関係について知りました。
http://santa-cecilia.blog.so-net.ne.jp/2007-10-03
米国文学がご専門なのでしょうか?
この本も非常に学術的で何かのご参考になると思います。
by Cecilia (2009-10-15 09:18) 

morichanの父

Cecilia さま。そのツッパリ・スケバンのマキシ・スカートは70年代前半の記憶として自分もあります。ご紹介の本、読んでみます。WEB情報だけではなくて実物の本を渉猟するべきだとあらためて思いました。

by morichanの父 (2009-10-15 16:05) 

morichanの父

(た)さま、ご訪問とnice,ありがとうございました。
by morichanの父 (2010-09-08 17:32) 

morichanの父

shin さん、どうもありがとうございました。
by morichanの父 (2010-09-08 17:33) 

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