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ハッピー・ソート(幸せの想い)――スティーヴンソンの5度目の言及 Happy Thought: The Fifth Mention of R. L. S. [Daddy-Long-Legs]

スティーヴンソンからテニソンへ From Stevenson to Tennyson」 
スティーヴンソンの最初の言及 The First Mention of R. L. S.
ジュディーと冒険 The Adventurous Judy
スティーヴンソン全集 Works of Robert Louis Stevenson
スティーヴンソン、ヴァイリマ Stevenson, Vailima
スティーヴンソン全集(アメリカのアザミ版) The Thistle Edition of Robert Louis Stevenson's Works
スティーヴンソンの手紙 Letters of Robert Louis Stevenson
のつづきです 

  やはり2年生の夏休みにロック・ウィローから書いた手紙の中で言及されるスティーヴンソンについて。滞在中に手紙を書いてきたジャーヴィス・ペンドルトンが8月25日にやってきて、一緒に山登りをしたりキャンプをしたりして過ごしたことの報告はこれの前の手紙に書かれていました。手紙の冒頭「とっくの昔に ages ago」この手紙を書き出していたのだけれど書き上げられていませんでした、とジュディーは書いていますが、手紙の後半を読むとまだジャーちゃんは農場にいるようです。たぶん9月の頭の手紙ではないでしょうか。

                                                          Saturday

     I started this letter ages ago, but I haven't had a second to finish it.
     Isn't this a nice thought from Stevenson?


           The world is so full of a number of things,
           I am sure we should all be as happy as kings.


     It's true, you know.  The world is full of happiness, and plenty to go round, if you are only willing to take the kind that comes your way.  The whole secret is in being pliable.  In the country, especially, there are such a lot of entertaining things.  I can walk over everybody's land, and look at everybody's view, and dabble in everybody's brook; and enjoy it just as much as though I owned the land--and with no taxes to pay!
(この手紙はとっくの昔に書き始められていたものなのですが締めくくるひまがまるでありませんでした。
  これはスティーヴンソンのですけれど、ナイスな想いじゃないでしょうか?
      世界は数多くのものでとっても満ちあふれている
      みんな王様のようにハッピーになるべきだと私は思う
  確かにそうです。世界は幸福に満ちあふれ、動き回るのに充分です、ただ自分のもとにあるものを受け入れさえすれば。すべての秘訣はしなやかさです。田舎ではとりわけ面白いことがたくさんあります。誰の土地だって歩きまわれるし、誰の景色でも共有できるし、誰の小川でもパチャパチャはねをあげられます。そして自分がその土地の所有者であるかのように享受できるのです――税金は支払わずに!)

  下のほうの、なんだかソローの『ウォールデン』を思わせるようなコメントは股の機械、いや又の機会にとっておいて(実は調べている余裕がない)、引用です。これは(ウェブスターがもっていたと勝手に想定しているスクリブナーズ版では、第16巻 XVI. [Ballads and Other Poems of Robert Louis Stevenson] A Child’s Garden of Verses & Underwoods & Ballads (1895)  359pp.  Rpt. 1911.  [1895初版] の25ページに詩集 A Child's Garden of Verses の24番の詩として載っています。タイトルは "Happy Thougt" 、「幸せな想い」あるいは「幸せの想い」という感じでしょうか。手紙を導入するジュディーの "Isn't this a nice thought" は、詩のタイトルともちろん響きあっています。――

HappyThought(R.L.S.).jpg

  もともと2行の短詩です。2行目の冒頭、 "I'm" が "I am" になっている(敢えて言えば誤引用)ところがちがいます。

  ところで、A Child's Garden of Verses が1885年に最初に出たときにはタイトルを Penny Whistles といったのだそうですが、数枚のカラー挿画以外はスティーヴンソン自身が描いたイラストが収められていたようです。

  それが、たとえば1895年に(Thistle Edition を刊行し出した)スクリブナーズ社から、全集とは別に単行本で出版された『子供の詩の庭』は、Charles Robinson のイラストで、この詩については版画の中に詩が刻まれています〔pdf.: <http://www.archive.org/details/stechil>〕。――

WS000201.JPG
illustration by Charles Robinson (1895)

 1902年にRand McNally から出た本では、E[thel] Mars (b.1876) と M[aud] H[unt] Squire (b. 1873) による、モノクロとカラーの挿絵が施されています〔e-text: <http://www.archive.org/stream/childsgardenofve00stev2#page/n5/mode/2up>〕。――

WS000213.JPG
illustration by E. Mars and M. H. Squire (1902)

   あるいは1916年にシカゴのM. A. Donohue 社から出た版(これは Gutenberg から挿絵入りでe-text 化されています: <http://ia331326.us.archive.org/1/items/achildsgardenofv19722gut/19722-h/19722-h.htm>)は Myrtle Sheldon という女性が挿絵を描いています。――

HappyThought-image_031_01.jpg
illustration by Myrtle Sheldon (1916)

   ということで、マザーグースほどではないにしても、さまざまな挿絵画家がイラストを競う詩集のひとつとなったのでした。それにしても作者自身がイラスト描いていたのにねー、という感じはしなくはないですが。

   それと、こういう挿絵を見ていると、硬い訳はふさわしくなく、「この世はたくさんのものでいっぱいだね/きっとみんな王様のように幸せになれるよ」みたいなふうに子供に帰りたくなりますw

   しかしまた、このハッピーな感覚は、「田舎」をジャーヴィスとともにあるきまわって、新たな目で見た結果かもしれず、そのへんが怪しいところです。

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