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トンズラの図 (豚走) Runaway Pigs [Daddy-Long-Legs]

ジュディーはなんだかんだいってあしながおじさんの指示と専制により、1年生から4年生までず~っと基本6月から9月の3ヶ月間ロック・ウィロー農場に行かされるわけですが、1年生の6月の土曜日の、これから執筆に燃えるぞ~という手紙の追伸で、豚が初めて言及されます。

PS. You should hear the frogs sing and the little pigs squeal and you should see the new moon! I saw it over my right shoulder.
(カエルの歌声と子豚の鳴き声をお聞かせしたい、そして新月をお見せしたいわ! 右の肩越しに見ました。)

  新月を右の肩越しに見るとラッキーというのは欧米の迷信です。ウィラ・キャザーの中篇小説 A Lost Lady のなかで、フォレスター夫人が ""Oh, I saw it over the wrong shoulder!" と言ったときに、wrong shoulder は left で正しいのは right です。

  豚と蛙が手紙を書いているあいだも鳴いているのかわかりませんが、いまは夜の8時半ごろで、起床は5時ということで早く就寝しようとしているようです。

  その次の、農場の仕事と周囲の様子が描かれる7月12日付の手紙では、ブタの頭数が示されています。――

The farm gets more and more entertaining. I rode on a hay wagon yesterday. We have three pigs and nine little piglets, and you should see them eat. They are pigs! We've oceans of little baby chickens and ducks and turkeys and guinea fowls. You must be mad to live in a city when you might live on a farm.
It is my daily business to hunt the eggs. I fell off a beam in the barn loft yesterday, while I was trying to crawl over to a nest that the black hen has stolen. And when I came in with a scratched knee, Mrs. Semple bound it up with witch-hazel, murmuring all the time, 'Dear! Dear! It seems only yesterday that Master Jervie fell off that very same beam and scratched this very same knee.'
The scenery around here is perfectly beautiful. There's a valley and a river and a lot of wooded hills, and way in the distance a tall blue mountain that simply melts in your mouth.
We churn twice a week; and we keep the cream in the spring house which is made of stone with the brook running underneath. Some of the farmers around here have a separator, but we don't care for these new-fashioned ideas. (Penguin Classics, pp. 45-46)
(農場はますます面白くなっています。昨日は干草のワゴンに乗りました。3匹の親ブタと9匹の子豚がいますが、食べっぷりをお見せしたいわ。ほんとに豚みたいなんです! 小さなヒヨコやアヒルやホロホロチョウが山のようにいます。農場暮らしができるのに都会暮らしをするのは気がヘンだと思います。
  タマゴを探すのが私の日課です。昨日、黒いメンドリが産みつけた場所を探して納屋の二階を這っていたときに、ハリを踏みはずして落っこちてしまいました。ヒザ小僧をすりむいて家に戻ったら、センプル夫人がハシバミをつけて包帯を巻いてくれました。そして、その間ずっと、「まあ! まあ! ほんの昨日のような気がすること。ジャーヴィー坊ちゃまもちょうど同じハリから落ちて、ちょうど同じヒザ小僧をすりむいたのよ」とつぶやいていました。
  周囲の景色は完璧に美しいです。谷あり川あり、そして木の茂った山もたくさんあります。はるか遠くには、口に入れたら溶けてしまいそうな高くて青い山があります。
  週二度攪乳します。クリームは、下を小川が流れる石造りの貯蔵小屋に保存します。近くの農家では脱脂機を持っているところもありますが、私たちはそういう新式の考えは好みません。)

  そして、1年後の2年生の8月10日のあとの木曜日の手紙で、ブタの頭数は変わっておらないのですが、9匹の子豚のうち一匹がいなくなった事件がニュースのひとつとして書かれています。(哲学的になって、世の中全般を論じたい気分なので、なかなか日常の瑣事に頭がむかわない、という旨の前置きをしたあとのニュース報告の冒頭です)。

Our nine young pigs waded across the brook and ran away last Tuesday, and only eight came back. We don't want to accuse any one unjustly, but we suspect that Widow Dowd has one more than she ought to have. (78)
(このあいだの火曜日に、うちの9匹の若いブタが小川を渡って逃げ出しました。そして8匹だけが戻りました。不当に人を訴えたくはありませんが、ダウド未亡人のところに自分の持ち数より一匹多くいるのではないかと疑っています。

  頭数は1年生のときと変わっていないのですが、子豚は little pigs / piglets から young pigs に成長したようです。しかし、たぶん成長したがゆえに逃亡をはかったとw。

  で、ブタが遁走する図(豚走図)ですが、いなくなった一匹は、もとから切れたかたちで描かれておるのでした。

WS000229.JPG

後足だけが描かれ、ヅラが見えません。

  ところでトンズラというのは豚面ではなくて、トンは豚走いや遁走、ズラは「ずらかる」のズラのようです。がっかし。

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ハミングピッグ Humming Pig <http://www.hummingpig.jp/> 〔養豚をより楽しく!より豊かに!鼻歌を歌いながら、楽しく養豚したい! 心と経営の豊かさを目指して、養豚家の皆様を応援するハミングピッグのトップページ。養豚関係サイトのリンク 現在のリンク数 364で同様サイト中 リンク数日本一

友貴千里のこぶたざってん <http://www.yukisenli.com/index.htm> 〔世界のブタグッズ・手作りアクセサリーの通信販売〕

ブタドン.コム <http://www.butadon.com/> 〔十勝の豚丼検索サイト〕

Willa Cather, A Lost Lady (1923) E-text at Project Gutenberg of Australia <http://gutenberg.net.au/ebooks02/0200451.txt> 〔オーストラリアの独自のグーテンベルク〕


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