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絵と絵で通じ合う (ウォルター・クレイン) Pictures to Pictures (Walter Crane) [思いつき whimsical fancy]

絵と絵を並べて透かし見ると見えるように見えること。

ウォルター・クレインとメイ・デー(前) Walter Crane and the May Day (1st Part)
ウォルター・クレインとメイ・デー(中) Walter Crane and the May Day (2nd Part)
ウォルター・クレインとメイ・デー(後) Walter Crane and the May Day (3rd Part)

 ちょっとボケッと考えてみると、18世紀前半の中世趣味を引き受けてイギリスで興ったゴシック・ロマンスの隆盛は文学史的には1820年くらいで表面下に没するとはいえ、もともと(ヨーロッパ的中世のなかったアメリカとはたぶんちょっと違って)イギリスのゴシック・ロマンスはナショナリズムとたぶんにつながっており、ゴシック・ロマンス的恐怖小説にかわって、ある種明るい「メリー・イングランド」的なノリの中世趣味が19世紀中ごろに興って、その流れの中で、ラファエロ前派やアート&クラフト運動や、あるいはオックスフォード英語辞典の編纂企画などが出てくるのかな、と門外漢的に想像するこのごろです。が、それはまたずれ、いやまたいずれということにして(以上メモ)。

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Walter Crane, The First of May: A Fairy Masque (1881)

  1881年の『妖精の仮面劇』で五月柱を描いたウォルター・クレインのその後の図像をあらためて眺めてみると、豊饒の女神=春の女神を五月柱と結びつける一方で五月祭の象徴を労働者の世界的連帯と結びつける意匠があったのだ、ということが見えてくるのではないでしょうか。

WalterCrane,WorkersMaypole(1894).jpg 
Walter Crane, The Workers' May Pole 『労働者のメイ・ポール』 (1896)

    一連の労働者のメイデーのデザインのなかで、この絵は明確に五月柱を標榜したものです。といっても、柱が一本立っているわけではない。中央の女神は、"Socialization・Solidarity・Humanity" と書かれたバナーを両手で広げ、その衣装の胸のあたりからは "Eight Hours" とか "Leisure for All" とか "Adult Suffrage" などと書かれた布切れが伸び広がって、それを人々が手にして回っています。この豊穣の女神=春の女神=地母神(だと思うのですが)はペデスタルというか細長い台座に立っているようです。けれども、この中心の軸となって周辺に多彩なメッセージを拡げている存在、あるいはそのさまをこそ、メイポールと呼んでいるわけです。別言すれば、メイフェアで人々がリボンを巻きつけて踊る五月柱の象徴の解釈をウォルター・クレインは提示しているということです。

  下の絵は、その8年前の、『労働のメイ・デー』と題されたものですが、前に書いたように、"Freedom" (自由)を冠した女神が右手には "Fraternity" (友愛)を、左手には "Equality" (平等)の帯を差しのべて、Africa, America, Europe, Australia, Asia の五大陸を代表する人々を連帯させています。

crane solidarity of labour.jpg 
Walter Crane, Labour's May Day 『労働のメイ・デー』 (1888)

  この絵では、立体的に、地球を中心に人々が輪を描いているのだけれど、立体的には背後にいるように見える女神は、平面的には地球を貫いて世界の中心に存在するように見えます。モーリちゃんの父にはそう見えるのだからしょうがないw。いや、上の絵と重ねて見ると、そう見えます。見えてくると思います。世界軸(Axis Mundi 宇宙軸)表象としての五月柱のイメジが投影されているのだと考えたくなります。

   もうひとつ。思いつき。

WalterCrane(1903).jpg
Walter Crane, The Emancipation of Labour 『労働の解放』 (The Sun, May 1, 1903)

AnarchistsofChicago(WalterCrane,1894)1024.jpg
Walter Crane, Anarchists of Chicago 『シカゴのアナキスト』 (Liberty, November 1894)

    上の絵は、1903年5月1日の The Sun 紙に掲載されたもの。メイデーの絵のひとつです。画像下のキャプションは、たぶん次のように書かれています。――"Her message to Labour sweet May-Day doth bring, /From the City of Toil as the multitude stream /To rejoice in the Sun, as they read in his beams /The Hope of the World with the promise of Spring." 人々を率いる女神が右手にもった花冠は、メイフェアにおいて五月柱に掛けられる、フロイト的性心理学的には女性の象徴とされるものです。

    下の絵はシカゴのヘイマーケット事件(1886年5月――記事「ウォルター・クレインとメイ・デー(前) Walter Crane and the May Day (1st Part)」を参照)を記念する絵ですが、8人が花輪で囲まれて、花冠となっている。そしてジェンダーの転覆が起こっている・・・・・これは我ながら無理がある思いつきかもしれません。よく見ると花輪じゃないや。目が悪いだけかもw


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