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塔 Tower [Daddy-Long-Legs]

1月29日の「フロアの曖昧性 Ambiguous Meaning of the Story of the Floor」の補足です。
  作家個人の背景やヴァッサーにひきつけないで考えると、ジュディーが自分の住まいを「塔」と呼び、その高いところの部屋から手紙を書きつづるのは、グリム童話のラプンツェルとレメディオス・ヴァロの『大地のマントを織りつむぐ』を足して(足したのはトマス・ピンチョンだけどw)2で割って、手紙というテクストを織りつむぐイメジを透視的に喚起するのだけれど、それはまことに身勝手な空想というものでありましょう。

  ヴァッサーの寮の建物については、以前「女子寮の話から火馬、火の車馬、火事馬、消防馬、消防馬車馬へ Fire Horses」と「ヴァッサー女子大 Vassar Female College」で書いたように、寮がどんどん建て増されて、Strong House (1893)、Raymond House (1897)、Lathrop House (1901)、Davison House (1902) と基本的には同様のデザインの4棟が19世紀末から20世紀初頭にかけてできました。
  で、自分の目は「D. R. L. S.: 親愛なるロバート・ルイス・スティーヴンソンちゃま Dear Robert Louis Stevenson」と称されるこの4つで止まっていたのですけれど、もうひとつ、やや異質の建物が、ウェブスター卒業後、しかし『あしながおじさん』発表前の1907年に建造されています。

JewettHouse,VassarCollege,with9-StoryTower.jpg
image via Karen Van Lengen and Lisa A. Reilly, Vassar College: An Architectural Tour 80

  Jewett House は1907年に、ヴァッサーの教授だった Lewis Pilcher の設計で建てられました。はじめの名前は "North" だったのだが、まもなく大学創設の貢献者で「初代」の学長だった Milo Parker Jewett (1808-82) の名をとって改名されたのだそうです。ジュウェットというひとは、1864年に退いているので、実際に大学が「開かれて」学生が通うようになった1865年の段階での学長は、レイモンド・ハウスに名が冠されている John H. Raymond だったのでした。
  下のマップで上の中央にあるのがジュウェット・ハウスです。


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  4つの既存の residence halls――マップの中央右から時計回りに、Lathrop House、Strong House、Raymond House、Davison House――に向かい合うようにして北に建てられた建物のメインの部分は、4階建てなのですが(そしてどうやら既存の寮も4階建てのようです、やはり)、同時に中央奥に連結する9階建ての "Tower" が建てられ、ここにも学生の部屋があったのでした。
  ですから、ジーン・ウェブスター在学中には影もかたちもなかった建物ですけれど、作家がヴァッサーをモデルに構想したのだとしたら、唯一高層の、しかも「タワー」と呼ばれたこの9層の建物にジュディーは虚構上はいたのかな、と思われるのでした。

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"Festivities to mark 100th birthday of distinctive Jewett House dorm. Saturday, April 21, 2007" <http://collegerelations.vassar.edu/2007/2409/> 〔ジュウェット・ハウス建造100周年記念祭〕


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morichanの父

kaoru さま、こんばんは。雪降っていますか?
by morichanの父 (2010-02-01 17:21) 

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