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×のしるしのある部屋 The Room Marked with a Cross [Daddy-Long-Legs]

なんとなく注記します。2 6個前の記事〔「眺めのよい部屋の窓の方向 (2) The Directions of the Windows of a Room with a View (2)」〕で、ウロオボエのままに、×じるしは「殺人の行なわれた部屋ではなくて」とか書きましたが、それは、『あしながおじさん』1年生の夏季休暇中にはじめて行ったロック・ウィロー農場 (Lock Willow Farm) の建物の絵への説明文に出てくるのです。

Daddy-Long-Legs(Century,1912)92.jpg

The room marked with a cross is not where the murder was committed, but the one that I occupy.  It's big and square and empty, with adorable old-fashioned furniture and windows that have to be propped up on sticks and green shades trimmed with gold that fall down if you touch them.  And a big square mahogany table―I'm going to spend the summer with my elbows spread out on it, writing a novel.  (Daddy-Long-Legs [Century, 1912], p. 94)
(X字を付けた部屋はべつに殺人が行なわれたところではなくって、わたしのいる部屋です。それは大きな四角いがらんとした部屋であって、すてきな古い家具があって、棒で支えておかなければならない窓があって、金の縁飾りの付いた緑色のさわっただけで落ちてきそうな日よけがあります。そして大きな四角いマホガニーのテーブル。わたしはそのうえに両肘をひろげて小説を書きながら夏を過ごすつもりです。)

  このジュディーのノリ――小説執筆に燃える後段ではなくて、最初の、「殺人があったとこじゃなくて~」、みたいな――はなんなのでしょう? 

  ジュディーが推理小説(探偵小説)にこれまで言及したのは、12月19日の夜9時45分付の手紙でした(昼間は「あなたはハゲですか?」という手紙を書いた日 [Letter 6])。それは、夜は勉強をしないで、ひたすら読書に励む、という趣旨のもので、みんなが自然に知っているのに自分が知らない作家や作品を歴史上の人物やら事柄と一緒に列挙している中に、シャーロック・ホームズが出てくるのです。リストの最後のところで、「シャーロック・ホームズなんて聞いたこともありませんでした(信じないでしょうけれど本当です)」と言っています。――

9.45 p.m.

     I have a new unbreakable rule: never, never to study at night no matter how many written reviews are coming in the morning.  Instead, I read just plain books―I have to, you know, because there are eighteen blank years behind me. You wouldn't believe, Daddy, what an abyss of ignorance my mind is; I am just realizing the depths myself.  The things that most girls with a properly assorted family and a home and friends and a library know by absorption, I have never heard of.  For example:
     I never read "Mother Goose" or "David Copperfield" or "Ivanhoe" or "Cinderella" or "Blue Beard" or "Robinson Crusoe" or "Jane Eyre" or "Alice in Wonderland" or a word of Rudyard Kipling.  I didn't know that Henry the Eighth was married more than once or that Shelley was a poet.  I didn't know that people used to be monkeys and that the Garden of Eden was a beautiful myth.  I didn't know that R. L. S. stood for Robert Louis Stevenson or that George Eliot was a lady.  I had never seen a picture of the "Mona Lisa" and (it's true but you won't believe it) I had never heard of Sherlock Holmes.  (Penguin Classics 24)

  〔4.10付記 これの全訳は記事「スティーヴンソンの最初の言及 The First Mention of R. L. S.」で書いていました。ははは。〕でも、それだけです。シャーロット・ブロンテの『ジェイン・エア』があとで引用されたり、キプリングを今読んでいると書いたり、ヘンリー8世がジュリア・ペンドルトンの家系がらみで言及されたり、スティーヴンソンの全集を買ったりするのに対して、ホームズがその後言及されることはありません。ホームズを知らないということは推理小説を読んだことがない、というに等しく(ほんとか?)、推理小説を読んだことがなければ「殺人があった部屋」を×印で示すなんて考えは浮かばないのではないでしょうか(ほんとか?)

  作家の仕事としては1908 年に匿名で The Four-Pools Mystery という推理小説をジーン・ウェブスターは出していて(これについては「June 30 Pg4のミステリー――本の電子化について――The Four-Pools Mystery by Jean Webster (2)」という記事などをアメリカにいたころに書きました)、当時は推理小説の全盛期でもあったのですが、ポロッと作家の興味が出てきたというのではない、と思います。

  というのは、『あしながおじさん』という作品にもミステリー仕掛けがほどこされていると、モーリちゃんの父的には思われるからです。

  たぶんここ数日の記事「ジェルーシャと近づく」に近づくかたちでつづきます(うそかも)。


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morichanの父

kaoru さん、こんばんは~♪ よい四月馬鹿の日でありましたように。
by morichanの父 (2010-04-01 23:40) 

morichanの父

ゆとりOLさま、couple さま、インテリアンさん、どうもありがとうございます。
by morichanの父 (2010-04-04 02:11) 

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