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いいじゃないの幸せならば (3) Wot's the hodds so long as you're 'appy? [Daddy-Long-Legs]

  『あしながおじさん』の2年生の3月5日の手紙で、Judy が「古典」の引用として書いているヘンな英語の話のつづき。

Wot's the hodds so long as you're 'appy?  (That's a quotation.  I've been reading the English classics.) 〔・・・・・・いいじゃないの幸せならば? (これは引用です。英文学の古典をこのところ読んでいるのです。)〕

  これの典拠がR. M. Ballantyne のDusty Diamonds Cut and Polished (1884) だという自分の推測が正しいとして、原典をちょっと読んでみると、そもそも続けて言葉遣い(発音)についての注釈が語り手によって書かれておるのでした。前後を貼り付けます。――

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   この25章のこの一節で Bobby Frog の過去と現在が言葉遣いの点で対比されてもいるわけです。「彼女」(Mr. Merryboy の母親)がまったく耳が聞こえなくなってしまったけれど、昔のBobby Frog だったら "Wot's the hodds so long as you're 'appy?" と言ったであろうような気持ちで彼女は平気を通します。で、この昔のBobby Frog の言葉遣いについて、今は工場のチーフ・エンジニアになっている Bobby Frog は、「H」音を落としたりあるいは間違って加えたり、というようなことはしなくなっていた――ただ、「R」音についてはいまでも問題があったけれど、と記述されています。
  Bobby Frog というのは人なのかどうかわからなかったのですが、カエルではなくてヒトでしたw。どうやら寓意的ないしおとぎ話的な名前が登場人物につけられているけれど、この小説はロンドンの下層階級の人々とキリスト教的慈善団体の実際の記録・資料に基づいて書かれたたぶんにマジメなプロパガンダ的な側面があるようです(よくはわかりませんけれど)。で、やっぱりロンドンのコックニーという予想はあたっていたようなのでした。今は親元を離れてカナダに(これはエディンバラ出身の作家のバランタインが一時生活の舞台にしていた土地です)来ている、Bobby Frog が、昔親に宛てて書いた手紙が数十ページ前に引用されており、それはコックニーを書き言葉に写した見本となっていると思います(し引いてみます)。――

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(308-309)

    Bobby の母親の Mrs Frog は娘の Hetty に、カナダのBobby から来た手紙をまた読んでおくれ、と頼み、読みあげられた手紙を "verbatim et literatim" 「一字一句」「逐語的に文字通り」書き記そうと、 "We" (語り手)は、慣用句とは言えラテン語のむつかしい言葉を使って引用するわけです。Hetty も示唆したように改善 (improvement) の余地はあるし、読者に忍耐を強いるべく書かれたものでもないし、母親にとっては大きな喜びだったのだし。
  ide park = Hyde Park,  Kensintn gardings = Kensington Gardens  ともに、ロンドンの公園です。eaven = heaven, arth = earth, pritty = pretty, nuffin = nothing, an = and, wy = why, kompair = compare, thems = them is, redeklis = rediculous, theres = there's, sitch = such, litle = little, shes = she's, wun = one, wot = what . . . .

  「コックニー」 Wikipedia

    「コックニー講座」 THE BRADY BLOG, 2005.3.15

    R 音の問題というのは、 R がちゃんと発音されないで /w/ になったり、逆に(やっぱり/h/ と同様)いらないところに/r/ が入ることです。

   ウィキペディアが言及するように、バーナード・ショーの『ピグマリオン Pygmalion』 (1913) (そしてそれを元にしたミュージカル&映画『マイ・フェア・レディ』で、(どうやら矯正されるべきものとして)コックニーがとりあげられたのは有名ですけれど、とりあえず『あしながおじさん』がらみで考えると、孤児院問題とか社会改良問題(後半にsocialism とかphilanthropyとか出てくる)との関係が――これは作者のJean Webster 自身の関心であるわけですが――あるかどうかというあたりがちょっと興味深いでしょうか。
  「いいじゃないの幸せならば」という人生観があちこちに響いているような気もしなくもないのですが。

RexHarrison&AudreyHepburn,MyFairLady.jpg
image via "My Fair Lady (film by Cukor [1964])", Britannica.com http://www.britannica.com/EBchecked/topic/716583/My-Fair-Lady

  
   ううむ。May Fair が My Fair になるみたいな可能性はあるのでしょうか。あ、でもそれだったら Lady も Lie Day か。いや、Lie Die か(わけわかめ)。 


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