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デートと万年カレンダー――ジュディーの誕生日  Dates and the Perpetual Calendar: Judy's Birthday [Daddy-Long-Legs]

『あしながおじさん』のジュディーとおじさんの年齢の開きに、たとえば画家マリ・バシュキルツェフとジュール・バスチアン=ルパージュ Jules Batien-Lepage, 1848-1884 の、あるいはオフィーリアとハムレットの歳の差がダブっているものかどうか怪しんでいる今日この頃です。のつづき。のつづきです。

  記事「おじさんの齢」で、(1) ジャーヴィス・ペンドルトンは11歳頃にロック・ウィローで夏を静養したが(Penguin Classics, p. 49=1年生の7月か8月)、それからおよそ25年くらい経っているらしいこと(p. 57=2年生の1月)、(2) ジャーヴィス・ペンドルトンはジュディーより14年前に生まれているらしいこと("he has fourteen years' start of me" [p. 126=4年卒業後の10月3日])を確認しました。

  さらに記事「ジュディーの年齢 Judy's Age」で、①作品冒頭の三人称の導入枠物語「ブルーな水曜日」で、孤児で最年長のジュディーは17年の人生を送っていること、②同じく「ブルーな水曜日」でリペット院長のことばとして、通常は16歳まで孤児院は世話をするが、ジュディーの場合は、14歳で(孤児院内の?)学校をおえてからさらに村の高校に進学させ、その結果、たいていの子より2年長く面倒をみたこと、③大学3年生の11月9日の手紙で、前の週に21歳になったことが書かれていること、を確認しました。

  その記事のおわりのところでは、誕生日の範囲をせばめるべく考えてきます、ぴゅ~っ、ということでしたが、昨日電車の中でパラパラ見ていたら、作品中おそらく一箇所だけ日付と曜日が特定できる箇所に昔チェックを入れていたのがわかりました。それで、遠回りのようですし、果たして収束するのかも定かではないのですが、忘れないうちに書き留め、推測を広げておきます。

  ペンギン・クラシックス版だと118ページ、4年生の3月5日の手紙です。この手紙の冒頭で、明日が3月最初の水曜日ということで、孤児院ジョン・グリアー・ホームを思い起こすわけです。それで、出だしも「おじさん」宛てではなくて「理事(評議員)さま」宛てです――

                                                                March Fifth

Dear Mr. Trustee,

     To-morrow is the first Wednesday in the month―a weary day for the John Grier Home.  How relieved they'll be when five o'clock comes and you pat them on the head and take yourselves off!  Did you (individually) ever pat me on the head Daddy?  I don't believe so―my memory seems to be concerned only with fat Trustees.
     Give the Home my love, please―my truly love.  I have quite a feeling of tenderness for it as I look back through a haze of four years.  When I first came to college I felt quite resentful because I'd been robbed of the normal kind of childhood that the other girls had had; but now, I don't feel that way in the least.  I regard it as a very unusual adventure.  It gives me a sort of vantage point from which to stand aside and look at life.  Emerging full grown, I get a perspective on the world, that other people who have been brought up in the thick of things, entirely lack.  (Penguin Classics, pp. 118-119)
(3月5日/理事さま
  明日は月の第一水曜日――ジョン・グリアー・ホームでは憂鬱な日です。5時になって理事さんたちがみんなの頭をなでて立ち去ったときに皆はどれほどほっとすることでしょう! 理事さん(ご自身)は、私の頭をなでてくださったことがありましたか、おじさま? 私にはそうは思えませんけれど――記憶にあるのはみな太った理事さんたちばかりのようなのです。
  ホームへ私の愛をお伝えいただければと存じます――本気の愛です。4年間の霞をとおして振り返ると、ホームに対するほんとうに優しい気持ちを感じます。大学へきたてのころ私はほんとに腹をたてていました。なぜってほかの女の子たちにあった正常な子供時代が自分には奪われていたのですから。でもいまは、少しもそんなふうには考えていません。とてもふつうじゃない冒険とみなしています。脇に立って人生を眺めるという利点を私に与えてくれています。十分に成長してから世に出てきたおかげで、豊かなモノに囲まれて育てられた他のひとたちにはまったく欠けている、世界を見とおす視座があります。)

  卒業を数ヶ月後に控えて、4年間の時の流れを読者に思い起こさせると同時に、作品冒頭の「ブルーな水曜日」のエピソードを思い出させてしみじみさせる一節なのですけれど、ここで、作家は月日と曜日を組み合わせて出してしまったわけです。「しまった」というのは、他にそういう箇所がないようだからです。

   ということで、3月5日の「明日」は水曜日。よって3月6日は水曜日です。

   唐突ですが、自分がときどき使う「日付」関係のサイトは次のようなものです。――


  (1) 
The Perfect Perpetual Calendar 〔「あの日は何曜日? 10000年カレンダー」 の英語版。たとえば作品を読んでいて日付と曜日があわせて出てきたとき・・・・・・〕
  (2)  
The Infoplease Perpetual Calendar 〔"The first year recorded by this calendar is 1583, the first full year of the Gregorian calendar. 1753 was the first full year in which the U.S. (then a British colony) began using the Gregorian calendar." (Note)〕
  (3) 
どらこむ お誕生日カレンダー
  (4) 知誕 〔雑学庫[知泉]雑学と誕生日 の中〕

   ふと、思いついたように、ジーン・ウェブスターが卒業した1901年を調べてみます(この年のカレンダーは1878年、1889年、1895年、1907年、1918年、1929年、1935年、1946年、1957年などと同一です)――(1) <http://www5a.biglobe.ne.jp/~accent/calendar/F.htm>。

SundayMondayTuesdayWednesdayThursdayFridaySaturday
__________12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31

   ビンゴ♪   1901年の3月5日は火曜日、翌6日は月の第一水曜日でした。

  そこで1年前の3年生の11月を確認します。

1900年11月の暦

SunMonTueWedThu  Fri   Sat 
____________1
2345678
9101112131415
16171819202122
23242526272829
30

 

    ジュディーが、「私先週21になりました」と書いた11月9日は、作者ジーン・ウェブスターがカレンダーに忠実であったならば、日曜日でした。そうすると、単純には11月2日から8日まで。そして昨日や一昨日を「先週」とはふつうは呼ばないでしょうから(わかりませんが、日本人の感覚ではそうでしょう)、11月2日~6日までのあいだにしぼられるのではないでしょうか。

  それにしても、孤児であったジュディーのほんとうの誕生日というのは霧のなかにあったのかもしれませんが。

  


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