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シェリーズ Sherry's Restaurant [Daddy-Long-Legs]

『あしながおじさん』の2年生の4月にジュディーが初めてニューヨーク市に出かけて泊まった Marth Washington Hotel について前に書きましたが(<http://occultamerica2.blog.so-net.ne.jp/2009-07-31-1>)、土曜日の朝、女の子3人で買物をしてから、お昼にジャーヴィー坊ちゃまと会ったのが Sherry's というレストランです。Sherry's は、その後に『ハムレット』を観劇する劇場のそばにあったはずなので、自然といえば自然ですけれど、当時有名な高級レストランでした。

     And after we'd finished our shopping, we met Master Jervie at Sherry's.  I suppose you've been in Sherry's?  Picture that, then picture the dining-room of the John Grier Home with its oilcloth-covered tables, and white crockery that you can't break, and wooden-handled knives and forks; and fancy the way I felt!
     I ate my fish with the wrong fork, but the waiter very kindly gave me another so that nobody noticed.
     And after luncheon, we went to the theater―it was dazzling, marvelous, unbelievable―I dream about it every night.  (Penguin Classics 版 65)
(それから買物がおわったあと私たちはシェリーズでジャーヴィー坊ちゃまと会いました。たぶんあなたはシェリーズをご存知でしょ? あそこを思い描いて、それからジョン・グリアー・ホームの食堂を思い描いてみてください――オイルクロスをかけたテーブルと叩いても壊れない白無地のセトモノと木の柄のついたナイフとフォークの食堂。それから、私がどう感じたか、思ってみてください! 
  私はサカナを食べるときにまちがったフォークを使いましたが、ウェイターがとても親切に代わりをくれましたので誰にも気づかれずにすみました。
  この昼餐のあとで劇場に行きました。目くるめくような、驚異的な、信じられないものでした――私は毎晩夢に見ます。

    ランチで何品食べたのかわかりませんけれど、コースじゃなくてアラカルトで注文したんでしょうか。魚用のフォークは肉用より小さかったりデザインが異なるだけでなく、花柄とかの装飾が施されて区別されていますが、ジュディーは金属のメタルでのフォーク&ナイフを使ったテーブルマナーに慣れておらなかったという話です。

  Sherry’s=Sherry’s Restaurant は Fifth Avenue and 44th Street にあったレストランです。Vermont 生まれの Louis Sherry (1856-1926) が1881年、Sixth Avenue and 38th Street に開いたのがもと。1891年にはFifth Avenue and 44th Street にprivate mansion を買って新しいレストランに改装したのだそうです。1903年の “Horseback Dinner”、1905年のルイ16世のヴェルサイユ宮風の舞踏会など歴史に残るパーティーが行なわれた場所で、南北戦争後のアメリカの高度経済成長「金めっき時代 the Gilded Age」の繁栄を反映した店のひとつでした。Louis Sherry 自身はは1919年にレストラン業をやめて菓子やジャム類の製造に専念したようです〔以上 Anya Laurence, “New York's Sherry's Restaurant: Manhattan's French-Inspired Society Cafe of the Gay Nineties,” Suite101.com, May 8, 2008 <http://americanhistory.suite101.com/article.cfm/new_yorks_sherrys_restaurant>による情報に金ピカの背景を適当に挿入〕。

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C. K. G. Billings's Horseback Dinner at Sherry's (1903) image via CKG Billings Estate: "In 1903, his lodge complete, Billings ordered an indoor, full-service, horseback dinner catered by the then famous Sherry’s Restaurant. By popular demand Billings relocated the dinner to Sherry’s midtown ballroom where 36 guests sat atop living, breathing, whinnying horses while waiters dressed as grooms catered to their every whim." <http://myinwood.net/ckg-billings-estate/>

     自身の馬好きとグルメの二つの嗜好を合体させるアイデアで、はじめ、シェリーズからケイタリングでパーティーを開き(ケイタリングというとギャツビーのパーティーを思い出します)、それが評判を呼んだので、今度はニューヨークの店のほうで36人が集って馬乗りディナーを開催したと。ウェイターは馬丁のなりに扮装して給仕したのでした。

  ブログ記事 "A black-tie dinner on horseback" Ephemeral New York, September 5, 2009 <http://ephemeralnewyork.wordpress.com/2009/09/05/a-black-tie-dinner-on-horseback/> にはもう少しくわしく飲食の様子が記述されています。おそらく、Edward Hungerford による評伝 The Story of Louis Sherry and the Business He Built (William Edwin Rudge, 1929) という本がこの手の記述の大本なのだと思われます。

  1919年に菓子のほうへ事業を転換するのですけれど、どうやらその後もシェリーズの名前の店舗存続したみたいです(ちょっと謎)。つまるところ1919年というのは禁酒法がらみなわけですね。

sherrys-dinner-at-the-met,rd.jpg
image via Operavision <http://aprilemillo.wordpress.com/page/36/>

 


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さえとあすみ

写真を見てもピンとこないディナー風景!
さらにフィルハーモニックレストランとは今から想像つかないくらい贅沢ですね^^

by さえとあすみ (2009-09-22 21:06) 

morichanの父

さえとあすみさま
自分でもよくわからないことを書いてすいません。最後の広告を載せたブログの外人さんは、行ってみたかった場所、みたいな感じで書いていたのですけれど、おそらくLouis Sherry の名を冠した新たなレストランがフィルハーモニック・ホール内につくられていた時期が過去にあったのだと思われます。こんどちゃんと調べて報告します。
by morichanの父 (2009-09-24 04:44) 

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