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『宝島』――スティーヴンソンの6度目の言及 (1) Treasure Island: A Sixth Mention of R. L. S. (1) [Daddy-Long-Legs]

2年生の夏にジュディーがロック・ウィロー農場で読み耽っている R. L. Stevenson は、2年の3月末の手紙で書かれている大学雑誌『マンスリー』の短篇小説の懸賞金25ドル“Jerusha Abbott has won the short-story contest (a twenty-five dollar prize) that the Monthly holds every year” [63]で購入したセット(“the set of Stevenson that I bought with my prize money” [71])を農場に持ち込んだのだと考えられます。ジュディーは1899年に出版されたSidney Colvin 編の書簡集に含まれる手紙のフレーズを引いていることから、ジュディー/ジーンが購入したスティーヴンソン全集は、Colvin 編の書簡集を2324巻として1899年に配本した、ニューヨークのScribner’s 社の the Thistle Edition であると推測されるわけです。この全集は全巻に共通して印刷されている総タイトルはないが、1895年に予約制で刊行を開始し、1899年までに24巻を刊行しました(その後1911年に新しい伝記2巻を2526巻として、1912年に新しい書簡集を27巻として刊行し、全27巻)。ジーン・ウェブスターがヴァッサー女子大に在籍したのは1897年から1901年でした。『子供の詩の庭』から Happy Thought” を引用してすぐあとの手紙では有名な『宝島』(Treasure Island, 1881-82雑誌掲載, 1883出版) に言及しています。 

Ship ahoy, Capn Long-Legs!

     Avast!  Belay!  Yo, ho, ho, and a bottle of rum.  Guess what Im readling?  Our conversation these past two days has been nautical and piratical.  IsnTreasure Island” fun?  Did you ever read it, or wasnt it written when you were a boy?  Stevenson only got thirty pounds for the serial rights――I don’t believe it pays to be a great author.  Maybe I’ll teach school.
     Excuse
  me for filling my letters so full of Stevenson; my mind is very much engaged with him at present.  He comprises Lock Willow’s library.
     I’ve been writing this letter for two weeks, and I think it’s about long enough.  Never say, Daddy, that I don’t give details.  I wish you were here, too; we’d all have such a jolly time together.  I like my different friends to know each other.  I wanted to ask Mr. Pendleton if he knew you in New York―I should think he might; you must move in about the same exalted social circles, and you are both interested in reforms and things―but I couldn’t, for I don’t know your real name.
     It’s the silliest thing I ever heard of, not to know your name.  Mrs. Lippett warned me that you were eccentric.  I should think so!
                                                                                   Affectionately,
                                                                                                                JUDY.
     P.S.  On reading this over, I find that it isn’t all Stevenson.  There are one or two glancing references to Master Jervie.
(船やああい、ロング・レッグズ船長!
 止まれー! それでよーし! よー、ほー、ほー、ラム一本だ。何を私が読んでいると思います? この二日間というもの私たちの会話は海事・海賊関係のことばでいっぱいでした。『宝島』って本当におもしろくないですか? この本を読んだことがあるでしょうか、それとも子供の時分にはまだ書かれていなかったかしら? スティーヴンソンは雑誌連載してたった30ポンドしか得られなかったのです――偉大な作家になってもあまりもうからないみたいですね。学校の先生になろうかしら。
 手紙がスティーヴンソンだらけになってしまいごめんなさい。私の頭は目下スティーヴンソンでいっぱいです。ロック・ウィローの書庫を構成しているのはスティーヴンソンなんです。
 この手紙には二週間かかっていて、ちょっと長すぎるかなと思います。けれども、ダディー、細かいことを書いていないじゃないかと決して言わないでください。  あなたもここにいらしたらいいのに、と思います。そうすればみんな一緒に楽しい時を過ごせるでしょうに。私、自分のお友達同士が知り合いになってもらうのが好きです。  ペンドルトンさんに、ニューヨークであなたを知っているか聞いてみたかった――知っているかもしれないです。あなたはきっと同じような上級の社交界に出入りしているにちがいありませんから。そうして、あなたもジャーヴィスさんも社会改良などに興味をもっていますし――けれども、尋ねることができませんでした。だって本当の名前を知らないのですもの。
 名前を知らないなんて、こんな馬鹿みたいなことがあるでしょうか。リペット夫人があなたは変なおじさんだって私に注意しましたけれど、ほんとうにそうだわ!
                                      愛情深い ジュディー
 追伸 読み返してみると、全部がスティーヴンソンではないですね。ジャーヴィー坊ちゃまがちょこっと出ています。)

  冒頭の部分の英語の注釈を――Ship ahoy, Cap’n Long-Legs!: “Cap’n” (=Captain) は『宝島』に頻出しますが、 “ahoy” は一箇所 (ch. 30) しか出てこず、 “Ship ahoy” というフレーズも出てきません。 “Ship ahoy!” は、英和辞典にも載っている有名なフレーズで、「《他船への呼びかけ・通信で》おーいその船よー!」(リーダーズ)。本文冒頭の Avast!:  「《海》待て,やめ! [Du  houd vast  to hold fast] (リーダーズ)という語は、 ‘Avast there!’ cried Mr. Smollett.” (ch. 20); “ ‘Avast, there!’ cried Silver.” (ch. 28) 2回『宝島』に出てきます。そのつぎの Belay!は “ ‘Belay that talk, John Silver,’ he [George] said.” (ch. 29); “ ‘Belay there, John!’ said Merry.” (ch. 32) 2回。belay stop の意味だが、もともと海事用語で、索止め栓などに綱を巻きつけること、また、 Belay (there)! は《海・口》で「(おい)やめろ,それでよーし!」(リーダーズ)。

   しかし、それに続く“Yo, ho, ho, and a bottle of rum”  は『宝島』をもっと直截に連想させるフレーズです。

   『宝島』は語り手のジム・ホーキンズが、少年時代の冒険を大人になってから書いているという設定で、1700年代に書かれたことになっています。父親がやっていた宿屋に泊まることになった船乗りが急に歌いだし、その後何度も聞かされることになった昔の船乗りの唄のリフレインが “Yo, ho, ho, and a bottle of rum” なのでした。

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(p. 6)

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(p. 174)


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