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ジュディーの5つのシークレット Judy's Five Secrets [Daddy-Long-Legs]

(このままだと卒業して話が終わってしまいそうなので、直線的な記事の進行を意識的に崩しますのその1. )

ジュディーが語る秘密と秘訣♪ (ほんとは秘密はひとつだけかも)

(1)  2年生3月5日(3月の風が吹く日)

"I never told you about examinations.  I passed everything with the utmost ease―I know the secret now, and am never going to fail again."
(試験についてぜんぜん話していませんでした。わたし、すべてらくらく合格しました――秘訣がわかっていますし、もう二度と落とすことはありません。)

〔解説〕ジュディーは1年生の学年末試験でラテン語と幾何で落第点をとってしまい泣きました ("She receives two flunk notes and sheds many tears"――これは本文ではなくて絵の中に書かれているコトバ)。――
WS000353.JPG
Daddy-Long-Legs (New York: Century, 1912)

残念ながらその秘訣をジュディーは語りませんが、When Patty Went to College (1903) から推すと、教師の身になってなんちゃら、というようなことではなかったかと思います(うろおぼえ)。

 

(2)  2年生8月の日曜日(ロック・ウィローからの手紙)

Isn't this a nice thought from Stevenson?


           The world is so full of a number of things,
           I am sure we should all be as happy as kings.


It's true, you know.  The world is full of happiness, and plenty to go
round, if you are only willing to take the kind that comes your way.
The whole secret is in being pliable.  In the country, especially,
there are such a lot of entertaining things.  I can walk over
everybody's land, and look at everybody's view, and dabble in
everybody's brook; and enjoy it just as much as though I owned the
land--and with no taxes to pay!
(これはスティーヴンソンのですけれど、ナイスな想いじゃないでしょうか?
      世界は数多くのものでとっても満ちあふれている
      みんな王様のようにハッピーになるべきだと私は思う
  確かにそうです。世界は幸福に満ちあふれ、動き回るのに充分です、ただ自分のもとにあるものを受け入れさえすれば。すべての秘訣はしなやかさです。田舎ではとりわけ面白いことがたくさんあります。誰の土地だって歩きまわれるし、誰の景色でも共有できるし、誰の小川でもパチャパチャはねをあげられます。そして自分がその土地の所有者であるかのように享受できるのです――税金は支払わずに!)

〔解説〕これは記事「ハッピー・ソート(幸せの想い)――スティーヴンソンの5度目の言及 Happy Thought: The Fifth Mention of R. L. S.」などでとりあげた箇所です。そして、「ジュディーの幸福論――3月5日の手紙(2) Judy on Happiness: The Letter of MarchFifth (2)」でも書いたように、ジュディーの幸福論につながるものです。

 

(3)  3年生12月7日の手紙

 [. . .]  Do you want me to tell you a secret that I've lately discovered?  And will you promise not to think me vain?  Then listen:
     I'm pretty.
     I am, really.  I'd be an awful idiot not to know it with three looking-glasses in the room.
(最近発見した秘密を、わたしに話してほしいですか? でも、わたしのことを見栄っ張りだと思わないって約束してくれます? それではお聞かせしましょう――
  わたし、きれいなの。
  本当です。部屋に3枚も姿見があるのにそれに気づかなかったら、わたしはすごいバカでしょう。 )

〔解説〕 これはほんとの秘密です。

 

(4)  3年生1月11日の手紙

It isn't the great big pleasures that count the most; it's making a great deal out of the little ones―I've discovered the true secret of happiness, Daddy, and that is to live in the now.  Not to be for ever regretting the past, or anticipating the future; but to get the most that you can out of this very instant.  It's like farming.  You can have extensive farming and intensive farming; well, I am going to have intensive living after this.  I'm going to enjoy every second, and I'm going to know I'm enjoying it while I'm enjoying it.  Most people don't live; they just race.  They are trying to reach some goal far away on the horizon, and in the heat of the going they get so breathless and panting that they lose all sight of the beautiful, tranquil country they are passing through; and then the first thing they know, they are old and worn out, and it doesn't make any difference whether they've reached the goal or not.  I've decided to sit down by the way and pile up a lot of little happinesses, even if I never become a Great Author.  Did you ever know such a philosopheress as I am developing into?  (Penguin Classics 97-98)
(華麗で大きな喜び〔快楽〕がいちばん大事なのではありません。小さな喜びから多くのものを引き出すことが大事なんです。――わたしは幸福の真の秘密を発見しました、ダディー。それはいまを生きることです。過去を後悔し続けたり、あるいは未来に期待する〔思い悩む、かも〕のではなくて、この一瞬を最大限に生かすこと。〔・・・・・・〕一瞬、一瞬を楽しむつもりだし、楽しんでいるあいだ、楽しんでいる自分を知るつもりです。たいていの人々は生きていません。ただ競争しているだけ。地平線の遥か彼方のゴールに到達しようとして、行き着くことに必死で、息が切れてあえぐばかりで、自分たちが通ってゆく美しい穏やかな田舎の景色をすっかり見逃してしまいます。そして、気がつくと、年老い疲れきって、ゴールに着こうが着くまいが違いはなくなってしまう。わたしは、路傍に腰をおろしてたくさんの小さな幸せを積み上げることを決心しました、たとえ〈大作家〉に絶対ならなくても。わたしがこんな女哲学者になりつつあるとは知らなかったでしょ?)

〔解説〕  これも記事「ジュディーの幸福論――3月5日の手紙(2) Judy on Happiness: The Letter of MarchFifth (2)」で日本語訳だけ引いた一節です。幸せの秘訣として、「いまが大事」ということを、たぶん宗教的な世界観・人生観への反発をひそませながら、論じています。

 

(5)  4年生4月4日の手紙(ロック・ウィローから)

What do you think is my latest activity, Daddy?  You will begin to believe that I am incorrigible―I am writing a book.  I started it three weeks ago and am eating it up in chunks.  I've caught the secret.  Master Jervie and that editor man were right; you are most convincing when you write about the things you know.  And this time it is about something that I do know―exhaustively.  Guess where it's laid?  In the John Grier Home!  And it's good, Daddy, I actually believe it is―just about the tiny little things that happened every day.  I'm a realist now.  I've abandoned romanticism; I shall go back to it later though, when my own adventurous future begins.  (Penguin Classics 110)
(私の最近の活動はなんだと思いますか、ダディー。性懲りもない、と思われそうですけれど――本を書いているんです。3週間前に始めて、むさぼるように進めています。秘密をつかんだのです。ジャーヴィー坊ちゃまとあの編集部のひとは正しかった。自分のよく知っていることを書くときにいちばん人をうなずかせることができるのです。それで、今回は、わたしがじっさい知っていることについての話です――知り尽くしていることです。舞台がどこに置かれたかあてられますか? ジョン・グリア・ホームの中です! なかなかのできです、ダディー、実際そう思えます――ほんとに毎日起こる小さなことについて書いているのですが。今わたしはリアリストです。ロマン主義はやめました。でも、あとになって、わたし自身の冒険にみちた未来が始まったときに、ロマン主義に戻るでしょう。)

〔解説〕 これは記事「ジュディーと冒険 The Adventurous Judy [Marginalia 余白に]」で一部引いた箇所でした。本来 "adventurous" (6) で "wandering spirit" (59: cf. "Wanderthirst")をもち、そしてスティーヴンソンやロマン派詩人にひかれるところのあるジュディーの、一種の暫定的妥協的文学観みたいなものです。

  

   なんとなく思うのは、(3) のジュディーがかわいいという発見はさておいて、幸せの秘訣と創作の秘密は、日常の細部に目を向けることによって生じるという点で通底しあったところがあるのではないか、ということです。そして、その発見こそが、孤児であったジュディーの、あれほど憎んでいた孤児院に対する見方が変化することと、密接につながっているのですし、そこにジュディーの人間としての成長もあるのではないでしょうか。(あ、まとめすぎた)

〔BGM〕 "Can You Keep a Secret"; 「ゆうべの秘密」;


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morichanの父

kaoru さん、こんばんは。
ナイスありがとうございます。
by morichanの父 (2010-01-08 21:42) 

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