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センチメンタル・トミー Sentimental Tommy [Daddy-Long-Legs]

4年生の試験が終わってイースター休暇に、ジュディーはサリーと一緒にロック・ウィロー農場に行きます。4月4日付けの手紙の追伸で、農場のニュースが報告されているうちの最後に、猫の失踪が出てきます。――

Sentimental Tommy (the tortoise-shell cat) has disappeared; we are afraid he has been caught in a trap. (Penguin Classics 121)
(おセンチ・トミー(三毛猫の)がいなくなりました。彼がワナにかかったのではないかと心配しています)

  センチなトミーは初登場です。"tortoise-shell" は「ベッコウ」(タイマイの背中を煮てつくる)、そして一般に「カメの背中」がもともとの意味で、なんだか「釣果の図」を思い出してしまいますが――

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釣果の図」参照

  ネコです。日本でいう「三毛猫」に相当するとされています。三毛猫は、日本語ウィキペディアにも書かれているように、ほとんどがメスで、オスはめったにいない(いわゆる伴性遺伝)とされていますが、ロック・ウィロー農場のトミーは「彼」と呼ばれているように、明らかに男です。英語のウィキペディアを見ると、やはり "almost exclusively female" と記述されていますけれど、掲載されている写真は、日本の三毛とは様子がちがいます。なるほど、ベッコウという感じ。――

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Tortoiseshell Cats, images via Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/Tortoiseshell_cat>

  ととろで、いや、ところで、"Sentimental Tommy" という、唐突に名指される名前ですが、もしかすると、ピーター・パンで有名なバリーの1896年の小説『センチメンタル・トミー』に由来するかもしれません。――

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James Matthew Barrie, Sentimental Tommy: The Story of His Boyhood (London: Cassell, 1896) <http://www.archive.org/stream/tommysentimental00barrrich#page/n5/mode/2up>

  1896年1月からアメリカの雑誌 Scribner's Magazine に連載、その年の秋に単行本として刊行されました。これの続編が Tommy and Grizel (1900) で、ピーターパンの原型的な少年が現われている、ともいわれています。

  ピーターパンが登場するのは20世紀になってからで、この少年(続篇だと青年)Tommy Sandys の物語は、比較的初期の作品ということになりますが、バリーは既に作家として名を挙げていて、ジョエル・チャンドラー・ハリスが好意的なコメントを書いています("A work of fiction that is as original as it is fascinating. Here, indeed, is life itself and all the accompaniments thereof." )。そして、ピーターパン以降も再版が出されたり、ちょっとあとの話ですが、1915年(監督トビー・クーパー、英)と1921年(監督ジョン・S・ロバートソン、米)に映画化もされています。   

   ピーターパン関係の作品は、The Little White Bird; or, Adventures in Kensington Gardens (1902) の後半にPeter Pan 登場後、Peter Pan (play) (1904) 、Peter Pan in Kensington Gardens (1906) 、When Wendy Grew Up: An Afterthought (1908) を経て、1911年に小説Peter and Wendy が出版されるわけで、同時代の作品・作者であったのは確かです。

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James Matthew Barrie, Sentimental Tommy: The Story of His Boyhood (New York: Scribner's, 1896) <http://www.archive.org/stream/sentimentaltommy00barr#page/n11/mode/2up>

   男の子です(ひつこい)   

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James Matthew Barrie, Sentimental Tommy (New York: Scribner's, 1896), E-text <http://www.archive.org/stream/sentimentaltommy00barr#page/n0/mode/2up> 〔Internet Archive〕

James Matthew Barrie, Tommy and Grizel (New York: Scribner's, 1900), E-text <http://www.archive.org/stream/tommygrizel00barruoft#page/n5/mode/2up> 〔Internet Archive〕

James Matthew Barrie, Tommy and Grizel (London: Cassell, 1900), E-text <http://www.archive.org/stream/tommygrizel00barrrich#page/n5/mode/2up> 〔Internet Archive〕

"James Matthew Barrie," Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/J._M._Barrie>

「ジェームス・マシュー・バリー」, Wikipedia <http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%90%E3%83%AA%E3%83%BC>

青空文庫 作家別作品リスト:バリ ジェームス・マシュー <http://www.aozora.gr.jp/index_pages/person890.html> 〔『ケンジントン公園のピーターパン』と『ピーターパンとウエンディ』〕

"SENTIMENTAL TOMMY JM. Barrie 2 Vol Set AUTHORS ED 1896 - eBay <http://cgi.ebay.com/ws/eBayISAPI.dll?ViewItem&item=260492867808>

「三毛猫」, Wikipedia <http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%AF%9B%E7%8C%AB>

"Tortoiseshell cat," Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/Tortoiseshell_cat>

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morichan

むねきちさま、はじめまして。
ご訪問ありがとうございます。
by morichan (2010-01-10 15:46) 

morichanの父

kaoru さま、ナイスありがとうございます。
by morichanの父 (2010-01-12 21:41) 

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