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ウィンドウ・シート Window Seat [Daddy-Long-Legs]

(このままだと卒業して話が終わってしまいそうなので、直線的な記事の進行を意識的に崩しますのその2.)
  外枠の「ブルーな水曜日」(そこまで戻るんかいw)。
  4年生3月5日の手紙で回想する(明日が月の第一水曜日だということで)孤児院での月一のしんどい日の記述から作品は始まっておったのでした。朝の5時から立ちどおしで院長にしかられたりせかされたりしながら掃除や調理や理事たちの接待や、さらにふだんと同じく子供たちの食事の世話などをようやく終えて、ホッとしたジュディーは窓際に腰を下ろして、帰宅する理事たちの車を目で追って、想像力を働かせるのですが、そのときの席について一席。

Then she dropped down on the window seat and leaned throbbing temples against the cool glass.  (Century 4/ Penguin Classics 5)
(それから彼女はウィンドウ・シートに崩れ落ち、ズキズキするこめかみを冷たいガラスに押しあてた。)

  日本語で「ウィンドウシート」というと(飛行機などの)窓際の席のことを指すのだそうです――『やさしいエアライン・ホテル用語辞典』参照――(これはモーリちゃんの母にも確認しました)。あるいは、フィルムみたいな感じで、窓を覆うシール状のモノ――宮崎県延岡市の看板屋ホリタの「窓をデザインするウィンドウシート」参照――(このときは seat ではなくて sheet なのでしょう)。

  ここでの window seat は、ベンチ状の窓下腰掛けだと思います。

  イギリスの Greenhill Design "window seats" <http://greenhilldesign.co.uk/window_seats/> の三つの例を見ると、左のふたつは出窓型ですが、みっつめのものは、壁面よりはみだして(でっぱって)部屋の内部に置かれているタイプです。

  ヴァージニア州の Scott's Woodworking の "Cedar Chest Window Seat" のページ <http://www.scotts-woodworking.com/portfolio/robin/window%20seat/seat.asp> は、構造と組み立てを解説しています。

  アンティークのものを探すと、取り付け型ではなくて、移動可能なベンチ式のものが目にとまります(つくりつけのものだとそもそも取り外して取り引きするのが困難ということもあるかもしれません)。たとえばBrooklyn Museum のコレクション "Brooklyn Museum: Decorative Arts:Window Seat" <http://www.brooklynmuseum.org/opencollection/objects/4736/Window_Seat> 19世紀前半のニューヨークのもの。

  いろいろと眺めると、装飾性の高いものから、シンプルな板だけのもの、箱型から脚のあるベンチ式までさまざまあるようです。そして上にも書いたように、動かせるものもありますけれど、基本、造り付けないし据付けであって、あっちにもっていったりこっちにもってきたりするような類の椅子でないことは確かでしょう。
  と、ここまで書いて、翻訳を見ると、「窓際の腰かけ」とか、「窓の腰掛」とか、ただの「こしかけ」とか、ただ「窓に腰掛けて」(!)とか、いろいろですが、どういう腰掛けなのか、イメジは沸きません。遠藤寿子のみ「窓框(まどかまち)」と訳していて、あー、そう言うんだ、と思って、確認すべく辞書を引いたのですけれど、框(かまち)というのは、ひとつにはユカ・トコ(床)などの端にわたす横木のこと〔「あがりかまち」というのはこれの例〕、もうひとつはト(戸)・ショウジ(障子)などの枠のこと、を指す言葉だとわかりました。
  そして、少なくともふつうの中型ぐらいまでの国語辞典(『広辞苑』もふくめ)には「窓框」の語はないようです。ところが、ウィキペディアには、項目としてはあがっていないのですが、異常に「窓框」の語が使用されている項目群がありました。鉄道系です。窓框まで何センチみたいな記述がたいへん多い。しかし、どうやら、上のふたつめの意味の「ワク」のことだと想像されます。なんで窓枠といわずに窓框というかは知りませんが。
  念のためさらに調べると、JAANUS: Japanese Architecture and Art Net Users System というところが "madogamachi 窓框" (「まどがまち」と濁っていました)を英語で説明しています。どうやら建築・技工系の専門用語なのかしら。――

The window frame into which a window sash is installed. The timber that surrounds a window.
(窓サッシが取り付けられる窓枠。窓を囲む建材)

  ということは、マドカマチからアガリカマチ的に、腰をおろす場所を連想した自分でしたが、窓框が窓辺の腰掛けを意味するということは考えられないわけですね(自信97パーセント)。

  自分のイメジでは、下のようなシンプルなのが孤児院などの建物内にはありかなーと。

Original Window Seat.jpg
image via Greenhill Design "window seats" <http://greenhilldesign.co.uk/window_seats/>

   ところで、窓辺に腰をおろして外を眺めるのが好きだと思われるジュディーは、大学の寮の部屋の窓が高いので、自分でウィンドウ・シートをこしらえることになります。その工作・工程がよくわからないので、その話はまた別の機会に。

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「ウィンドウシート (Window Seat)」 <http://dictionary.tabig.com/a/2005/08/post.html> 〔『やさしいエアライン・ホテル用語辞典』 <http://dictionary.tabig.com/> 内。いろいろな「旅行用語集」に同じ項目・記述があるようで、これがオリジナルかどうかは不明〕

「窓をデザインするウィンドウシート/看板屋ホリタ/宮崎県延岡市」 <http://www.horita-net.co.jp/print/window/win.html>

"madogamachi 窓框" <http://www.aisf.or.jp/~jaanus/deta/m/madogamachi.htm> 〔JAANUS: Japanese Architecture and Art Net Users System〕

「サッシ」、「さからはじまる 建築用語辞典」 <http://www.rakkensya.com/sites/sa/> 〔『楽建舎建築用語辞典』 <http://www.rakkensya.com/sites/about/a05/>〕――

【サッシ】
窓枠と窓框(まどかまち)の総称。工業製品としての建具。スチール製・アルミニウム製のものが多い。「サッシュ」ともいう。


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morichanの父

kaoru さま、ご訪問ありがとうございます。
by morichanの父 (2010-01-13 21:03) 

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