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『あしながおじさん』の年代の確定 [Daddy-Long-Legs]
『続あしながおじさん Dear Enemy』(1915) の3月6日付のジュディー宛の手紙 (Penguin Classics 156-158) には、サリーが "Betsy Kindred, 1910" にジョン・グリアー・ホームの仕事の手伝いを頼んだことが報告されています。――
Do you remember Betsy Kindred, 1910? She led the glee club and was president of dramatics. I remember her perfectly; she always had lovely clothes. Well, if you please, she lives only twelve miles from here. I ran across her by chance yesterday morning as she was motoring through the village; or, rather she just escaped running across me.
I never spoke to her in my life, but we greeted each other like the oldest friends. It pays to have conspicuous hair; she recognized me instantly. I hopped upon the running-board of her car and said:
"Betsy Kindred, 1910, you've got to come back to my orphan-asylum and help me catalogue my orphan."
And it astonished her so that she came. She's to be here four or five days a week as temporary secretary. She's the most useful person I ever saw. (157)
(1910年度のベッツィー・キンドレッドを覚えてる? グリークラブのリーダーで演劇部でも部長をしていたのだけれど。わたしはよくおぼえてるわ。いつもすてきな服を着ていたのですもの。でね、驚いたんだけど、ここからわずか12マイルのところに住んでいるの。きのうの朝、彼女が自動車でこの村を通り抜けようとしていたときに、ばったり出会ったの。というか、もうすこしで轢かれるところだったわ。
これまでいちども口をきいたことがなかったのだけれど、おさななじみの友だちのように互いにあいさつしました。目立つ髪の毛をもっているのって、得だわ。すぐにわたしとわかってくれた。自動車のステップにとびのって、わたし言ったわ。――
「1910年のベッツィー・キンドレッドさん。あなたはわたしの孤児院にとってかえして、孤児たちのカタログをつくる手伝いをしてくださらねばだめよ。」
彼女はあんまりびっくりしてついてきました。臨時の秘書として、週に4日か5日かきてくれることになりましたが、なんとか臨時じゃなくさねばなりません。わたしがこれまで見てきたなかでいちばん役に立つ人です。)
"Betsy Kindred, 1910" の 1910 は大学の卒業年です。
つづく「水曜日」の(サリーの婚約者)ゴードン宛の手紙では、キンドレッドについて、"Betsy and I were in college together" (ベッツィーとわたしは大学で一緒だった)と説明しています。
これだけでは、ベッツィーとサリー(とジュディー)が同級だったのか、先輩後輩だったのか、はわかりません。けれども、『あしながおじさん』4年生3月5日の手紙で、翌日が月の第一水曜日、とジュディーが書いたのを根拠としてカレンダーを確認したところでは、3月6日(水)というのは、(a) 『あしながおじさん』が出版される1912年か、(b) 作家のジーン・ウェブスターがヴァッサー大学を卒業する1901年に合致しているのでした(そのあいだの1902~1911年はあてはまりません)。〔「デートと万年カレンダーによるジュディーの誕生日の推定はほんとにあっていたのか? Was the Supposition of Judy's Birthday from Dates and the Perpetual Calendar True」参照〕
そうすると、やっぱり(b) の1912年に卒業というのが正解だったのかな、と思われました。ベッツィー・キンドレッドは2年上なのではないか、と考えられ(同学年だったらそれなりの書き方があるような気もしますし)。
仮にジュディーの日付に現実の時間との対応という正確さがないとしても、1910年と重なるころに、ジュディーやサリーの大学生活は設定されていることは確認されるのでした。
ちなみに、『続あしながおじさん』ではジュディーとジャーちゃんに娘ができていて、一緒に南へ旅行していますし、あとで出てきてやはり孤児院経営を助ける同級のヘレン・ブルックスは、大学を卒業後に結婚・男児出産・愛児の死亡・離婚・実家との口論・ニューヨークに出て出版社勤務、という人生経験をつんでいます("Since her graduation she has been married, has had a baby and lost him, divorced her husband, quarreled with her family, and come to the city to earn her own living." 302)。ですから、『続あしながおじさん』の物語が始まるときには、数年が経過している、と推測されます。
kaoru さん、こんばんは。
どうもありがとうございます。<m(__)m>
by morichanの父 (2010-01-17 00:24)