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フロアの曖昧性 Ambiguous Meaning of the Story of the Floor [Daddy-Long-Legs]

『あしながおじさん』1年生10月1日、最初の手紙から1週間後の、ジュディーからの2通目になる手紙に、部屋と建物の説明があります。――

My room is up in a tower that used to be the contagious ward before they built the new infirmary.  There are three other girls on the same floor of the tower―a Senior who wears spectacles and is always asking us please to be a little more quiet, and two Freshmen named Sallie McBride and Julia Rutledge Pendleton.  Sallie has red hair and a turn-up nose and is quite friendly; Julia comes from one of the first families in New York and hasn't noticed me yet.  They room together and the Senior and I have singles.  (Century 25-26 / Penguin Classics 14-15)
(わたしの部屋はかつて新しい診療棟が建てられる前に伝染病棟だった塔の高いところにあります。塔の同じフロアにあと3人女の子がいます。メガネをかけてていつもわたしたちにどうかもう少し静かにしてちょうだいって言っている4年生と、あとは1年生がふたりで、名前はサリー・マクブライドとジュリア・ラトレッジ・ペンドルトンといいます。サリーは赤毛で鼻がすこし上を向いていますがとてもフレンドリーです。ジュリアはニューヨークの一流の名家のお嬢さんで、まだわたしのことなど目に入っていないようです。ふたりが相部屋で、4年生とわたしは個室です。)

  この「塔」がたとえばペントハウスみたいな屋上階のことをいうのではなくて、ファーガスン・ホールを指していることは3ヶ月ほどたったクリスマス休暇の終わりのころの手紙で、"Four hundred girls live in Fergussen." (ファーガスンには400人の女の子が暮らしています)と書き、さらに、 "My tower is just a trifle lonely; when nine people occupy a house that was built for for hundred, they do rattle around a bit." (わたしの塔はちょっとばかりさみしいです。400人が住むように建てられた家を9人で占めていると、ちょっとガタガタ音を響かせて歩きまわる感じです。)と書いていることから確認できます (Century 56 / Penguin Classics 28)。クリスマス休暇でサリーもジュリアも、その他大勢の女の子たちも帰省してしまい、大きな建物に9人しか残っていないのでした。
  この400人という数字は4年生4月4日のサリーと一緒にいったロック・ウィロー農場からの手紙でも繰り返されます。――  

Our [Sallie's and my] nerves had got to the point where they wouldn't stand another meal in Fergussen.  Dining in a room with four hundred girls is an ordeal when you are tired.  There is so much noise [. . .]. (Century 273 / Penguin Classics 118-119)
(ファーガスンではもうこれ以上食事をするのが耐えられないほどわたしたちの神経はくたくたになっていました。疲れているときに、400人の女の子と同じ部屋で食事をするなんて拷問みたいなものです。騒々しいったらないんです・・・・・・。)

 

  そうすると、何階かはわかりませんが、たぶん建物の下のほうの階には、400人がいっせいに食事をとれる大食堂一室 (a room) があるわけです。だから、各階に4人しか住まないような日本の小さなアパートみたいなのが高層100階になっているわけではない。そうすると、同じフロアに4人しかいない、というのはなんだかあまりに不自然ではないでしょうか? 
  では、floor に別の意味合いがあるのでしょうか? 辞書を引いてもはっきりした説明は出てきません。OED オックスフォード英語大辞典を見ると、「床」の意味が先にあって、そこから「階 storey, story」の意味が出てきたらしいことはわかります。アメリカ辞書の権威ウェブスターに敬意を表して、1913年の国際版(W1 の改訂版)を引けば、以下のように、OED よりは細かく分類してはいます(5以下は省略)。

1. The bottom or lower part of any room; the part upon which we stand and upon which the movables in the room are supported. 〔それぞれの部屋の床〕

2. The structure formed of beams, girders, etc., with proper covering, which divides a building horizontally into stories. Floor in sense 1 is, then, the upper surface of floor in sense 2. 〔「建物を水平に分割して階 (stories) とする、梁(はり)、桁(けた)、そして梁や桁を覆う部分などから形成される構造」 この2の意味の上層表面部が1の意味のfloor ということになる〕

3. The surface, or the platform, of a structure on which we walk or travel; as, the floor of a bridge. 〔路面とかの面(という感じだと思います)〕

4. A story of a building. See Story.  〔建物の階〕
Webster's Rivised Unabridged Dictionary (1913) <http://machaut.uchicago.edu/?action=search&word=floor&resource=Webster%27s&quicksearch=on>

  で、結局よくわからないのですが、「階」というのではなく、それをさらに分割したユニットをフロアと呼ぶのではなかろうか、という想像(妄想?)だけが残っている状態です。どういう区切りかはわかりませんけど。
  「同じ階」「同じフロア」はおかしいのではないか、というおはなしです(自信30パーセント)。ちなみにジュディーが自分のアドレスとして最初の手紙の冒頭に記していたのは、"215 FERGUSSEN HALL" です。21階という信じられない高層なのかしら(ありえね~)。それとも、ヴァッサー女子大の最初の学生寮 Strong House の写真を見て考えると、建物がいくつもくっついてひとつになっている感じで、それぞれは一応フロアが別に構築されている、ということなのかしら(そうすると「タワー」という感じがあんまりしないですけど)。――

strong-wide.jpg
image via "Strong House - Residential Life - Vassar Colege" <http://residentiallife.vassar.edu/residence-halls/halls/strong.html>

  アメリカに住んでいるかた、知恵をいただけるとありがたいです。と書きかけましたし書いてしまいましたが、なんだか上に書いたようなことかもしれないという気がしてきました。このストロング・ハウスの収容人員は現在162名だそうですが、建築自体は"The house provided 100 single rooms and a dining room big enough for all of them." と書かれています。窓の数から勘定して住居部分が4階だとして、100÷4=25。これを縦に五つとか六つとかに割る構造になっていればシングル・ルーム4つだけで1「フロア」というのは成立しますね。


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morichanの父

マロンさま、ご訪問とナイスありがとうございます。
by morichanの父 (2010-01-31 08:45) 

morichanの父

kaoru さん、どうもありがとうございます。
by morichanの父 (2010-01-31 08:45) 

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