世界滑稽名作集の『蚊とんぼスミス』のムカデ Centipedes in "Katombo Smith" [Daddy-Long-Legs] Translated by Azuma Kenji [Daddy-Long-Legs]
1919年、サイレント映画の Daddy-Long-Legs (邦題『孤児の生涯』)の出た年、の、たぶん暮れに出版された東健而の『滑稽小説 蚊とんぼスミス』は、その10年後、改造社の世界大衆文学全集の第34巻、東自身が編訳した『世界滑稽名作集』に『蚊とんぼスミス』としておさめられます(少しくわしくは、以前の記事「遠藤寿子と『蚊とんぼスミス』――東健而の『あしながおじさん』 (5) Azuma Kenji's Translation of Daddy-Long-Legs」「1919――『蚊とんぼスミス』――東健而の『あしながおじさん』 (4) Azuma Kenji's Translation of Daddy-Long-Legs」など参照)。
大正9年玄文社刊の初版は、箱入りの秋草弥三郎の装丁ということで、挿し絵や全体のデザインがどうなっていたのか、実物を見ることがかなわず(キコウ本だし高いし国会図書館にもないのだもの)、わかりません。それで、以下のは、1929年の改造社版の場合の話です。
上の行数でいうと、1行目の叫び声でひとつの段落。そして2行目からの段落の2行目から5行目までの3行の、上3分の1強くらいにムカデがタテ向きに挿画されています。「その声は、」は、百足図の行にかかっていますけれども、しかし、そのあとスペースがあって、明らかに文章中に組み込まれていることが了解されます。つまり、「その声は、」――スペース、改行――で行頭に目をやると百足図が眼に入り、そのうえで、「斯う言ふ百足のために出ちやつたのよ。」とつながるわけです。
流石です。
直角です。
ラインをちゃんと読んでいます。
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これまでの百足話――
「脚の話 (1)――百足図 Leg Stories: Centipede Pictures」
「脚の話 (2) ――詩の歩格や詩脚についてムカデのむこうに透視するの巻の上 Leg Stories (2): Foots, Meters, and Centipedes Pt.1」
「脚の話 (3) ――詩の歩格や詩脚についてムカデのむこうに透視するの巻の中 Leg Stories (3): Foots, Meters, and Centipedes Pt.2」
「千本足――脚の話 (4) Thousand Legs: Leg Stories (4)」
「千本足パート2――脚の話 (5) Thousand-legged Worm, Part 2: Leg Stories (5)」
「足のむくまま、またはムカデの方向――脚の話 (6) As the Feet Will Carry: Leg Stories (6)」
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