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柳腰外交 Willow-Stance [Pliable] Diplomacy [思いつき whimsical fancy]

前の記事の「新規蒔き直し」からの観念連合・連想的なはなしです。
  むろん、いまだに「新規蒔き直し」という日本語表現自体の起源は調べがついていない(調べる気も暇も今ない)のですが、「蒔き直し」という言葉が比喩(またはじめからやり直すこと)として江戸期からあって、でもフランクリン・ローズヴェルトの世界恐慌後の対策としての New Deal の訳語として「ニュー・ディール(政策)」と並んで「新規まき直し」という日本語が、いつからかは知らんが、あったわけです。で、ローズヴェルトの "new deal" とはトランプ・ゲームでカードを配りなおすことをいいます。
  内閣官房長官の「柳腰外交」発言(「弱腰だ弱腰だと言うが、「柳腰」という、したたかで強い腰の入れ方もある。しなやかに、したたかに、中国に対応していく」)についてはあれこれとテレビ、ラジオ、WEB、巷でも言われており、モーリちゃんの父的には政治議論に乗る気は毛頭2:50 もないのですけれど、ただ言語表現として考えてみる。
  そうすると、発言自体は「弱腰外交」じゃないか、と問われたときの答えであり、「柳腰」ということばは「弱腰」に変わって「外交」ということばを修飾する「ヒユ」として置換されたものであることは明白です。どういうことかというと、既に「ヒユ」 (隠喩 metaphor) として機能しているわけで、「柳腰」というコトバ自体の本来の意味はもうどっかにむかって(どこかというと結局「外交」なのだが)transfer (転義)されている。そうすると、もともとの意味はこうだとか言ってもしょうがないわけです。「柳腰外交というのは言葉遣いが間違っている(柳腰は女性の形容で、物事をしなやかに処理するという意味に取るのは飛躍だ)」と言われたって、「柳腰」と「外交」が初めて合体して新たなヒユが出来たんだから、新しいに決まってるじゃんみたいな――つまり、「新規」+「蒔き直し」みたいに(というのは、お百姓さんの作業として「新規」はイカにも異様な形容で・・・・・・と言うのでは不十分で、既に江戸期に「ヒユ」化して「やり直し」の意味を獲得していたとしても、合成語になるのは新規の発展と思われ・・・・・イヤ、結局調べてないのだからわからないのだけれど、New Deal の訳語として「ニュー」を「新規」として言葉をつくったのかなー、と勝手に想像したりするわけです)。仙石氏の日本語感覚がすぐれているとミジンコも思っておるわけではないですが。
  それはそれとしてちょっと興味深かったのはTBSラジオで土曜日だったか、永六輔(とピーコ)が、「柳腰」は陰間というかゲイというか、男の腰を言うコトバだ(それは中国でもそうだ)という会話をしていたことでした。音読みの「リューヨー」のもとの中国語の意味がむかしからそういう意味なのかわかりませんけれど(とりあえず日本の国語辞典はもっぱら「女性」に限定している様子です)。こっちのほうが興味深い。いと。

  つづく

   追伸。比喩として考えると、「柳腰」自体が既にヒユ――柳のような腰――なので、「腰」に対して「腰」として新規ヒユを呈示した(かもしれない)某長官の言語感覚に対して、もっぱらのほうに意識が高いひとたちは人間的身体・肉体にむかってしまったのかしら。それとも「柳腰」という表現そのものが喚起する女性的イメジがあまりに強かったのかも。おそらく、「弱腰」、「および腰」などが身体から離れて比喩性が高いのに対して、柳腰はもっぱら腰自体の比喩的形容という点で異なっており(結局そこのところに、「ヒユ」が新たなヒユとして呈示された(かもしれない)という微妙なところがあるわけです)。「丸腰」(腰に武器を付けていない)はその中間かしら。「へっぴり腰」というのはおならをするようすなのかしら。

NewDeal_MarchSong_.jpg


タグ: willow New Deal
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