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アシナガオジサンとハエ The Daddy Long-legs and the Fly [Marginalia 余白に]

Wordnik 〔いちおー「ワードニックとワードテック Wordnik and Wordtheque 」参照〕 で daddy-long-legs, daddy longlegs, Daddy-Long-Legs などくりかえし引い(検索し)たおかげで、しばらく記事を書かなかった『あしながおじさん』に思いが募った正月八日です。

  エドワード・リア (Edward Lear, 1812-88) が "The Daddy Long-legs and the Fly" という nonsense poem を書いていることを知りませんでした。「ノンセンス」というカタカナ日本語が、高橋康也さんの『ノンセンス大全』 (晶文社, 1977) と高山宏訳『ノンセンスの文学』 (河出書房新社,1980) 〔Elizabeth Sewell, The Field of Nonsense (Chatto,1952)の訳〕以来イギリス文学方面では固まっていたかと思いきや、2003年に出ていた柳瀬尚紀訳のエドワード・リア『ナンセンスの絵本』(岩波書店) は「ナンセンス」になってました。ま、ナンセンスのほうがフツーですけど。

  ウィキメディア・コモンズの Edward Lear の項目にはリアが描いたハエとアシナガオジサンが2葉載っています。――

Edward_Lear_The_Daddy_Long-Legs_and_the_Fly.jpg

Edward_Lear_The_Daddy_Long-Legs_and_the_Fly_2.jpg

 

  テクストの歴史はよくわかりませんけれど、単行本としては最初は1871年に出た次の本に収められていたようです。――

☆Edward Lear.  Nonsense Songs, Stories, Botany, and Alphabets.  Boston: James R. Osgood, 1871.  <http://www.archive.org/stream/nonsensesongsst00leargoog#page/n8/mode/2up>  PP. おー、ページ番号なしだ、数えてPp. 10-14

Lear,Edward_NonsenseSongs(Boston,1871).JPG

出版社の名前聞いたことある、と思ったらボストンかよ! と思ったら、同年にちゃんとイギリスで出版されていました。――

☆Edward Lear.  Nonsense Songs, Stories, Botany, and Alphabets.  London: Robert John Bush, 1871.  <http://www.archive.org/stream/nonsensesongsst02leargoog#page/n4/mode/2up> 〔と思ったら、でも残念ながらこれの少なくとも Read online は不全。ナンセンス!〕
Lear,Edward_NonsenseSongs(London,1871).JPG

☆同、1872年増刷 <http://www.archive.org/stream/nonsensesongsst01leargoog#page/n14/mode/2up>  Pp. 10-14

nonsensesongsst00leargoog_0023.jpg

  オー (O)、3行抜きのイニシアル♪  〔でもこっちも14-15ページの挿絵が消えてますね。14ページの下に、船に乗る蚊、いやハエとザトウイチ、いやガガンボの図があるわけですけど〕

☆Project Gutenberg は、1894年のリプリント版に依拠した旨きちんと注記したうえでE-text をこしらえていました。オリジナルの挿絵つきです。―― <http://ia700307.us.archive.org/35/items/nonsensesong13647gut/13647-h/13647-h.htm> 依拠したテクストは、Boston: Roberts Brothers, 1894 でした。ロバーツというのは『若草物語』の出版社ですね。

☆アメリカでは19世紀末の1899年にボストンの別の出版社 Little, Brown から Nonsense Songs and Laughable Limericks というタイトルの本が出版され、コピーライトのページには Roberts Brothers 1888/ Little Brown, 1899 と記載されています。 <http://www.archive.org/stream/nonsensesongslau00lear#page/n5/mode/2up>  37pp+38pp.  三つ目の詩。ツーか、この本はページナンバーが入っていますけど、合冊みたいになっています。14-17ページ。組版が異なっていますね、明らかに。

EdwardLear,NonsenseBooks(Boston,1888).JPG

☆1910年、ロンドンでリア自身のイラストをはずして L. Leslie Brooke の挿絵を入れた本が出ています。――Nonsense Songs.  London: Frederick Warne, 1910.  12番目に入っています。タイトル、 "The Daddy Long-Legs and the Fly" になっています。画家のLeslie Brooke をフィーチャーしたシリーズ本が出ていたのでした。<http://www.archive.org/stream/nonsensesongs00lear2#page/n7/mode/2up>

DaddyLong-LegsandtheFly,L. Leslie Brooke(1910).jpg

 

☆エドワード・リア・ホームページというのがあって、挿絵つきで掲載しています。<http://www.nonsenselit.org/Lear/ns/dll.html>

    えーと、なにが言いたかったのかと言うと、何が特に言いたかったというのでもなく、すべて書いたことを言いたかったということかもしれませんが、とりあえず、イギリスの daddy long-legs はクモの親戚のザトウムシではなくて羽の生えた6本足の昆虫のガガンボ(カガンボ)だ、ということです。

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Works by Edward Lear @ Project Gutenberg

Edward Lear Home Page @ nonsenselit.org


ワードニックとワードテック Wordnik and Wordtheque [辞書・辞典・事典類]

「女性作家の言祝ぎ A Celebration of Women Writers」で書いた、A Celebration of Women Writers の編集者であるペンシルヴェニア大学のメアリー・マーク・オッカーブルームさんは、Wordnik という辞書もこしらえていて、このあいだからときどき使っています。複数の辞書の定義が並んで、長めの用例文章がリンク付き(ない場合もある)で示されます。

  たとえば tin kitchen を引くと、つぎのページがあらわれます。――

  "tin kitchen - definition and meaning from Wordnik" <http://www.wordnik.com/words/tin%20kitchen>

  でも Definitions については "No definitions are available for tin kitchen." と表示されています。辞書には見つからないと。まあね。つーか、OED の用例にはあったわけですけれど、さすがにそんなところまではカヴァーしておらない(あ、記事書きそびれていました。書かねば・・・・・・とりあえず昔の記事)。

  でも便利なのは用例です。最初のページには3つ挙がっているだけですけど、Examples のラインの View all  をクリックすると、11例並んででてきます(all といっても全部出るわけでなくて最大11で、残り5個あり)。<http://www.wordnik.com/words/tin%20kitchen/examples>  『若草物語』から3つ入っていて、第二部でも出てくるのだとわかりました。コールドウェルの『タバコロード』の "toss out the twisted tin kitchen dishes and china doorknobs" は、なんかモノが違いますね。

  あと、検索結果のデフォールトが Definitions ですけど、横に "Thesaurus  ·  Examples  ·  Pronunciations  ·  Comments  ·  translate to: [select language]" と並んでいて、コメント欄は用例や注釈を呼びかけているので、参加型のところもあるらしい。

  えーと、定義がある単語をためしてみます。daddy-long-legs で引くと――

  "daddy-long-legs - definition and meaning from Wordnik" <http://www.wordnik.com/words/daddy-long-legs>

  "–noun   1. common misspelling of daddy longlegs." あ゛、"daddy longlegs" が正しくて、"daddy-long-legs" は「よくあるつづり間違い(ミススペリング)」だったのね。でもこのスペリングでの用例は挙がっています。

  "daddy longlegs" で引くと、ちゃんと辞書の記述を見ることができました。

  "daddy longlegs - definition and meaning from Wordnik" <http://www.wordnik.com/words/daddy%20longlegs>

Wordnik.JPG

  あとflickr の画像も並びます。

  しかし・・・・・・かんじんのジーン・ウェブスターの『あしながおじさん』はどこに? ふと思いついて "Daddy-Long-Legs" で検索したら、用例に出てきました、出てきました。<http://www.wordnik.com/words/Daddy-Long-Legs/examples>

   つまりハイフンの有無、大文字小文字などに sensitive なのですね。これはこれで使いようによっては便利かもしれない。

  Wordtheque というのは前世紀からあるサイトで、Logos という multilingual な企画のひとつです。Logos のほうは "The Dictionary" が別になっているので、もっぱら用例をコーパスから検索するのが Wordtheque の用途かしら。以前よく使っていたのですが、でも以前からどこにあるのかよくわからなかったのですが(w)、"Logos Library" というのがサイト名だったようです。

  Logos Library - Word by word multilingual library <http://www.logoslibrary.eu/pls/wordtc/new_wordtheque.main?lang=EN&source=search>

    説明――"Welcome to the Logos context search facility LOGOS LIBRARY. The LOGOS LIBRARY is a powerful interface with a massive database (currently 707.737.941 words) containing multilingual novels, technical literature and translated texts. Hits are highlighted in context windows that can be expanded up or down. To go to the source web pages (novels, etc.) click on the title - to run a dictionary search click on the highlighted word or phrase."

  検索は "word" となってるけれど、3語の並びまで入れられます。"daddy longlegs" "daddy-long-legs" "daddy-longlegs" など試してみると意外にというか悲しいくらいに少ない(ないし零)なのだけれど、ハイフンにsensitive でないことは確認されました。 "tin kitchen" はいくつも出てきます。昔は検索結果のURL が出てきたのに、いまはダメみたいなので、絵で貼ります。――

Wordtheque.JPG
LogosWordtheque.JPG

  5例しかないです。 Good Wives というのは『若草物語』の第二部の最初のタイトルです。

   文脈をくわしく読みたいときにダイレクトにパッセージにリンクしているので便利かもしれない。Wordnik のほうはそうではないので。

  よくいえばどちらも出前一長一短。しかし Wordnik のほうが伸びそうな気配がします。Wordtheque はなんかあんまり進化していないような。もっとコーパス増やせばいいのに。

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Wordnik: All the Words <http://www.wordnik.com/> 〔ここで dictionary と thesaurus の選択があるのですね〕
Wordnikisaddaxchalumeauecclesiarch
gorgeousnessthemosticonoclasmkip
ombrophoboushamcomprehensivedictionary
quesadillasaddlebacktautogeneityin
theknownuniversevodkawanderlust

[Wordtheque] Logos Library <http://www.logoslibrary.eu/pls/wordtc/new_wordtheque.main?lang=en&source=search>

 

Logos - Multilingual Translation Services <http://www.logos.it/about_logos/index.html> 〔Logos のindex page〕

Logos - Multilingual Translation Portal <http://www.logos.it/> 〔こっちがホームかも。こちらには logos library のリンクがあります〕


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