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~に対する危険性が高くなっています A [The] Danger [Risk] of [for, against] . . . Is Increasing [文法問題]

昨日の夜のNHKのニュースのなかの気象情報で気象予報士(ちなみに女の人だったけど、彼女の作文というのではないだろう)が何度も繰り返していて耳についたコトバ――

土砂災害に対する危険性が高くなっています。

  この不思議な、もってまわった、翻訳口調の、日本語はなんなのだろう。「土砂災害の危険が高くなっています」という言い方ではだめなのだろうか。

  「翻訳口調の」とわざとらしく書いたけれど、「に対する」は英語だと against なのかなー、for なのかなー。わからないけど、自分の日本語の感覚だと、「対する」という言葉は、対象を示すのだから(これは for も against も同じかもしれない)、危険でいうなら危険の及ぼされる対象(客体)となるものとくっついて「人体に対する危険(性)」とか、「環境に対する危険(性)」というのがまっとうな使い方であって、危険を及ぼす主体にくっつくものではない。

  でも、WEBで検索するとNHK同様の表現が目につくのでした。――

0.  閣僚宣言「児童ポルノ犯罪者によって脅かされる児童に対する危険性」 <http://www.moj.go.jp/hisho/kokusai/g8_2009_07.html> 〔法務省:閣僚宣言 (これは「仮訳」と書かれていて、イタリア語から日本語に戻したものみたいだけど、日本語全体がおかしい〕

1.  「故高木仁三郎さんが「福島原発」の津波に対する危険性を16年前に予言していた」 <http://matoshorseracing.blog.so-net.ne.jp/2011-05-08>

2.  「日本ではヘディングに対する危険性が全くと言っていい程認識されていません」 <http://qa.fresheye.com/qa/view.php?qid=1158034936&kw=%E7%A5%9E%E7%B5%8C%E5%AD%A6> 〔「ヘディングの危険性に対する認識」ならわかる〕

3.  「施工による風荷重に対する足場の危険性評価環境シミュレータ」 (pdf.) <www.jniosh.go.jp/publication/SRR/pdf/SRR-No26-04.pdf> 〔「足場の倒壊に対する危険性が高い」とか〕

4.  「都市の災害に対する危険性を明らかにし、広く知らせることが防災都市づくりの第一歩です」 <http://www.mlit.go.jp/crd/city/sigaiti/tobou/kikendo.htm> 〔国土交通省の「都市災害危険度」 もっと日本語を練れよ、という文章・・・・・・「都市災害」の危険性なのか、災害における都市の危険性なのか、わけわかわからん――さすがに都市が災害に対して害を成すとは思われませんが、それは思われないだけで、構文上は、そう読めもする〕

5.  「減塩運動が始まった当時には,減塩に対する危険性はないと考えられていたが」 <http://www.geocities.jp/t_hashimotoodawara/salt7/salt7-seawater-health2.html> 〔「塩と健康(2)減塩に降圧効果はあるのか? また減塩は可能であり,危険性はないか? Salt and Health (2) Does Salt Restriction Have Any Antihypertensive Effects? And Can Everyone Restrict Salt Intake without Deleterious Risks?」 『日本海水学会誌』54-1 (2000)〕

  その他いろいろいろいろ。

  なんでも「の」で済むと思っているわけではないです、もちろん。「の」は曖昧だし、個別の文章内で「の」でよかったり悪かったりする。しかし、意味を明確化するかと思われる言葉遣いが、逆に意味を曖昧にしているという事態は、馬鹿としか思われません。

  そして、こういう言葉遣いが好まれること――もってまわった翻訳調の日本語(坂口安吾が「ペルシャ語」と評した日本語)を好む学術的な場においてだけでなく、ふつうの人からも好まれること――は問題だと思う。(「危険性」と「性」が付いているからじゃないの?という疑問が聞こえてきそうだが、確かに「性」はそれ自体、日本語において大きな問題をはらんでいます――おそらく科学的学問性みたいな嗜好・指向・思考と「ナントカ性」という表現を好む気分はつながっていて、とりわけここ数十年に多くなっている感じがする。でも「性」の問題を除いても残る問題はあるのだ)。

  それは、「希望の橋」でなくて「希望という名の橋」と呼ぶ感覚、あるいはそう呼ぶ感覚をよしとする感覚、逆に、なにも感じなかったりする無感覚、とどこかでつながっているような気がするのです。

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image via JAF | 地域情報 | お知らせ <http://jafevent.jp/event_info/area_info/index.php?From=detail&contribution_id=12766>  ――潜んでいるのは子どもなのか、危険性なのか?


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