脚の話 (2) ――詩の歩格や詩脚についてムカデのむこうに透視するの巻の上 Leg Stories (2): Foots, Meters, and Centipedes Pt.1 [Daddy-Long-Legs]
『あしながおじさん』の1年生4月か5月の月曜日の手紙に描かれたムカデ図を眺めていたら、それが文中で1行をなして、かつ、センテンスの一部であることがわかりました。――
絵の次の行が "only worse." と、only が大文字ではなくて小文字で始まり、worse のあとにピリオドがついています。この "only worse." を翻訳者のなかには「しかもおそろしいことに、さっきの最後の文を書きおえて、次に書くことを考えている最中に、このムカデが、ポトッと、手もとにおちてきたんです。」とか、「それよりもっと恐ろしいことには、ちょうど最後の一行を書き終って次に何て書こうかと考えていたときに――ぱたり――とそれが天井から落ちてきて私のそばに着陸したのです。」とか、次のセンテンスとくっつけて訳しているひともいますけれど、worse の比較は百足図に対するものであって、(こんなの like this だったけれど――ムカデ図登場――)「でももっとひどい〔いやな worse<bad=nasty〕。」という意味です。だから、しつこく書くと、この図の入ったセンテンスは、
It was caused by a centipede like this: [百足図] only worse.
なのでしょう。
ううむ。いや、インデント(頭下げ)した引用を含んで、
It was caused by a centipede like this:
[百足図]
only worse.
というのが精確かしら。いや、そんなセンテンスの表記はないですか。ともあれ、百足の頭だか尻だかにピリオド [.] なりセミコロン [;] なりコンマ [,] なりが絵なのでそもそも付けがたいし判別不能なのはさておき――気持ち的にはセミコロンくらいほしいような――、only が Only でないのは確実。ゆえに、逆に言えば、"only worse." は次のセンテンスではなくて、その前の部分とくっついてセンテンスを成すということも確かです。
足がもつれた感じなので出直してきます(ほんとは買物と夕飯タイム)。
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過去の百足記事――
「脚の話 (1)――百足図 Leg Stories: Centipede Pictures [Daddy-Long-Legs]」
「ムカデの生態 Centipedes [Marginalia 余白に]」
ムカデの生態 Centipedes [Marginalia 余白に]
「脚の話(2) 」とする内容ではないので、余白に書き留めます。
ムカデは広義にゲジみたいなものまで入れるといろいろな種類があるのですけれど、いずれにしてもムカデ類は節足動物の仲間です。節足動物には昆虫もクモ類も入るわけですが、日本語のウィキペディアを見ると、全体としていろいろな分類が提案されているようですが意見の一致はないのだそうです(ほんとかどうか知りません)。いっぽうで、いちおう新らしめの分類においては、ムカデは多足亜門 Myriapoda に、ヤスデ綱(倍脚綱)Diplopoda などと一緒に ムカデ綱(唇脚綱)Chilopoda として位置づけられています(旧分類だと大顎亜門 Mandibulata として昆虫綱 Insecta や甲殻綱 Crustacea とも一緒だったのが、どうやら見たところ足の多さを名称とする門にいれられてコガネムシやエビ・カニとは違う網におさまっているようです(しろうとの目から見て)。myriapoda というラテン語のmyria は"many" でpoda は "legs" であることは確かです。chilopoda の chilo というのは "lip" 唇という意味ですが、唇足とはなんぞや。どうやら口の後ろの体節がアゴとかも含めどういうふうに足の体節から形成されるかで名前ができているようです(頭部の次の体節に歩肢がなくてアゴができているとか)。よくはわかりません。
英語のウィキペディアの "Centipede" も日本語のウィキペディアの「ムカデ」も、なんだかカラフルな種の写真を載せていて、違和感があります。自分がむかし日本海の田舎の家で見た(子供の目ではありましたが、15~20センチくらいありました)のはオオムカデ目・オオムカデ科のトビズムカデではなかったか、と思います。これは日本では最大になるムカデのようですが、英語のリンクを見ると、"Chinese red-head centipede" となり、東アジアとオーストラリア周辺でみられる種類のようです(漢方で蜈蚣ゴコウと称される)。
渡辺塾の「ムカデ」のページは、刺されたりひっくり返したりしてムカデを撮影し、かつ途中から英文混じりで解説・ルポルタージュしていますけれど、Scolopendra すなわちトビズムカデですので、日本の話でしょうか <http://www.geocities.jp/faithfulwata/centipede/newpage1.html>。
ムカデはいろいろな生息場所があるみたいですけれど、アメリカの建物内に出るムカデはどういうものなのでしょう。気になります。
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図書室にこもって調べた結果、北アメリカの家に出るのはScutigera coleoptera という種みたい(自信20パーセント)。でも再びWeb で確認しようとすると、ゲジの一種だと書いている日本語のサイトがあったりするので、よくわかりませんが、はじめは足の数が少なくて、成長するにつれてどんどん数が増えるようです。そして動きが早くて、ゴキブリやハエをつかまえる。で、これは "the house centipede" とも呼ばれるようです。それから "the garden centipede" と呼ばれるのが北アメリカでもっともよく見られる種類のようですが、数インチを超えることはめったにない小さい種のようです。
あ、英文ウィキペディアに Scutigera coleoptera 、ありました。あ、対応する日本語ウィキペディアではゲジです。えー、なんだよ~。15対しか足ないし、胴は短いし・・・・・・。
"House centipede stalking a spider" image via Wikipedia <http://en.wikipedia.org/wiki/Scutigera_coleoptrata>
しかし、どうころんだって、これはジュディーが描いているムカデではないですよね。
半分じゃなくて四分割したって長さが足りないです。Scutigera coleoptera としてもっとムカデっぽい画像を載せているページもありますが、それはまちがいかもしれませんし、そもそももはやScutigera coleoptera にこだわってもしょうがないかもw。
ただ、おそらくまちがっていないのは、"house centipede" と呼ばれることの多い種としてScutigera coleoptera がいますが、ジュディーが遭遇しているのはそれではない、ということです。そして、ゲジにしろムカデにしろ、クモやムシを食べる(当然おとなしいザトウムシも食べる)predator、carnivore であることです。そしてザトウムシと違って毒をもっています。(ザトウムシ=daddy-long-legs については「アシナガトウサン――ダディーロングレッグズ (2) Daddy-Long-Legs [Daddy-Long-Legs]」を参照)。
で、しょうがないので、イメジと、動きと生態を把捉すべく、現時点ではでかいムカデの映像を参考にはっておくことにします。気持ち悪いものが苦手なひとはここから下は見ないほうがいいかもしれません。スペースをあけておきます。どうやら有名な『ナショナルグラッフィック』の提供のようなのですけれど。
"Centipede vs. Snake" (1:52) posted by NationalGeographic on June 2, 2008.
"Giant Centipede" (3:20) posted by NationalGeographic on July 12, 2007.
あしからず。