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手袋単複問題 A Pair of Gloves / Gloves [文法問題]

えーと、前の記事「キッドの手袋 Kid Gloves and Kid Mittens [Daddy-Long-Legs]」を書いたあと、電車に乗ったり人としゃべったり(ぜんぜん関係ない話で)人の顔を見たり電車の中で化粧をするとなりの人の手を見たりして、思ったのですが、もちっと、英語の文法問題を考えてみたいと思いました。

Do you want to know something?  I have three pairs of kid gloves.  I've had kid mittens before from the Christmas tree, but never real kid gloves with five fingers.  I take them out and try them on every little while.  It's all I can do not to wear them to classes.  (Penguin Classics 18)
(おじさまにいいことをお知らせいたしましょうか? わたしキッドの手袋を三足持っておりますのよ。前に、キッドの指なし手袋(ミットンズ)はクリスマス・ツリーのをもらったことがありましたが、五本指のほんとのキッド手袋ははじめてです。ひまさえあれば、出してはめてみますの。教室へはめて行きたくてたまらないのですけれど。〔中村佐喜子訳、旺文社文庫、27ページ〕)

  ふたつめのセンテンス、"I have three pairs of kid gloves." はまことに文法的に手袋3組を言い表しています。前の記事に書いたように、Oxford Dictonary of English (2005) を見ると、"(usu. mittens)" 〔つまり、通例複数形〕として "a glove with two sections, one for the thumb and the other for all four fingers" というふうに書いています。でも、あとから思ったのですけど、ミトンだから通例複数形になるわけでなく、靴下にしても靴にしてもふつうの手袋にしても、さらには日本人にはわかりがたい感覚で、パンツとか、メガネ(これはわからなくもないが)とか、ズボンとかスラックス(半分死語)の意味としてのパンツはともあれ下着のパンツ/ティーズみたいな複数形=1個、あるいは "a pair of なんたら~" みたいな。

  ま、英語は不便だなー、と言ってしまえばそれまでなのですけれど、ワタクシ的には、いったいキッド(ほんとの子ヤギ革)の手袋を、入学直後にジュディーは何組もっていたのだろう、というのは気になるところであるのです。

  4番目のセンテンスでは "them" で、"kid gloves" を受けて、でも3組すべてなのか、"real kid gloves with five fingers" なのか、そして後者だとしても何組なのか、不明です。そもそも "real kid gloves with five fingers" と書かれたときに(つまり "pair" というコトバを使わず書かれたときに)、何組かわからんのです。

  ジュディーは作品導入部の「ブルーな水曜日」 (Blue Wednesday) で、あしながおじさんと同じ理事と思われる(まー教育委員会みたいなところから出てきている人らしけれど)プリチャードという女性に「ブルーな水曜日」という題の作文を認められ、理事の前でそれが朗読され、あしながおじさんの耳にとまって大学にいくことが決まったということが語られるわけですけど、このプリチャードが大学進学に必要な品々を準備してくれる、ということもリペット院長は語っています。ですから入学前に(つまりとりわけクリスマス以降あらわになるような、あしながおじさんのプレゼントの前に)ジュディーは身の回りの品々(具体的には主として服飾品)を携えて寮に入ったことは了解できるのです。じっさい翌月の11月の手紙では、3つドレスを持っていて、みたいなことをジュディーは語っています。ですから、高級手袋を、まー、2つや3つ、ミス・プリチャードが揃えてくれてることも考えられなくはない。

  で、文法問題がですが、1個(1組/1足)の手袋でも、やっぱり gloves と複数形になりますね。だから、「ひとつ」(ひとくみ)の手袋でも "them" で受けられます。

    しかし、そういうことも含めて、たぶんウェブスターは遊んでいるのではないか、と思われるのでした。(前の記事ではっきり書きませんでしたけれど、自分の読みが正しければ、最初の  "I have three pairs of kid gloves" は、(翻訳のいくつもが「も」をつけて訳しているように)、三つ「も」もってるんですよ、という匂いを漂わせておいて、そこから孤児院時代の過去にさかのぼってクリスマスのミトンの手袋の話をして笑かす(泣いてもいいけど、まー、ここは泣けないかと思います)、という展開なのではないでしょうか。

  以上、酔って帰ってきて書いているのですけれど、実は前から気になっている文法問題を新たな「マイカテゴリー」とすべく、マイッカ的なはじめとして書かせてもらいました。まじでわからん英文法の問題があるのです(つーか、とりあえずでも100パー「わかる」のを「問題」と少なくとも醒めた自分は呼ばないのだけれど)。

  予告的に書いておくならば、ジュディー=ジーンは、英語の、文法問題といっていいのでしょうが、について『あしながおじさん』のなかで疑問を投げかけているところが二箇所はあります(酔ってきっぱり)。しょうがについて書くつもりはないですが。

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「gloves - 英和辞典/和英辞典」 <http://jp.wordmind.com/ecmaster-cgi/Jsearch.cgi?kwd=gloves&bool=and&word=im> 〔用例集〕


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