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眺めのよい部屋の窓の方向 (1) The Directions of the Windows of a Room with a View (1) [Daddy-Long-Legs]

3月7日の記事「タンスをウィンドウ・シートに改造する Converting a Bureau to a Window Seat」で、ジュディーが1年生のときの工夫を書きました。

  そのときにも(再度)触れましたが、イラストレーターの Laura Diehl さんの、商業的にはオーディオ・ブックのラベルに使われた絵は、ヴァッサー女子大のキャンパスを調べて描かれていて、いろいろな意味で感心するところありました。画像使用についてメールを書こうかと思いながら時間がすぎてしまい、とりあえず、情報を記して直接ひっぱります。――

daddylonglegs_wip4blg.jpg
image: Laura Diehl Illustration News: Daddy Long Legs (just about done), March 19, 2009 <http://ldiehl.blogspot.com/2009/03/daddy-long-legs-just-about-done.html>

    商業タイトルが入る前の、ほぼ完成した原画だと思われます。

  で、開いた窓のそばに腰掛けて、危ないじゃん、というのはもうおいといて、方角の問題です。

  この、ジュディーによって「塔」と呼ばれる建物のモデルが、ジーン・ウェブスター在学時(1897-  1901)のヴァッサー女子大にはなかった1907年建造の9階建ての Jewett House の "Tower" であったであろうことは「塔 Tower」で書きました。

  Diehl さんの絵の、タンスを改造したウィンドウシートに悠然と腰かけているジュディーの右手から風に舞って窓の外に飛んでいく紙の先にあるのが Main Building です。ここに、どうやらジーン・ウェブスター自身は居住したらしい。 Diehl さんが、ジーン・ウェブスターが入学時にあった「寮」、ストロング (1893) とレイモンド (1897) のどちらかにジュディーの部屋を定めて考えたのか、それともモーリちゃんの父と同じ推理をして1907年のジュウェットを想定したのか、は、絵からはわかりません。

  そして、2年生になると部屋を変えるジュディーが、「ウィンドウ・シート」もそのまま引っ越したかどうかみたいな、テクストに書かれない事情もあるので、断定はできないのですけれども、少なくとも、1年生の部屋について、方角はつぎのように書かれていました。通算2通目になる、1年生10月1日の手紙です。――

My room is on the northwest corner with two windows and a view.  (Century 26/ Penguin Classics 15)

  北西の角にあって、窓はふたつです。

  で、以下はまことにフィクションとノンフィクションをフィクショナルに混合するという、わけのわからん思考なのですが(でも実は文学ってそういうものかもしれない)、ジュディーが住んだのが、ジュウェット・ハウスであれ他の寮であれヴァッサーの地理をモデルにした場所ならば、つぎの、「建物の向き (2)――建物の向きの指示は大学向きだったっていえるのかい Direction(s) of Buildings (2)」に引いた地図が「北西」方向を位置づけてくれます。――

Vassar-AxisPlan,withBuildingsThatFollowtheNaturalTopography.jpg

  図の左が北です。上は東。つまり、北西は左下方向を指します。図の十字に交差する線のちょっと上にあるインヴェーダー型の建物が Main Building、その左下のテニスコートみたいなところに4つ組み合わさっているのがStrong House (1893)、Raymond House (1897)、Lathrop House (1901)、Davison House (1902) 、そしてその左(北)に南北線上に乗っかっているのが Jewett House (1907) です。

  すなわち、少なくとも1年生の部屋の窓から見えるのは、Main Building ではなくて、むしろ大学のキャンパスとはとりあえず無関係の自然の風景だったのではないでしょうか。

  (ちょっと考えながら続きます)

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関連先行記事らしきもの――
塔 Tower
『パティ、カレッジへ行く』の献辞 Jean Webster's _When Patty Went to College_, Dedicated to "234 MAIN AND THE GOOD TIMES WE HAVE HAD THERE"
ウェブスターが1年生のときのヴァッサー大学のカタログをまた見てみる Vassar Catalogue for 1897-1898 When Jean Webster Was a Freshman
建物の向き (1)――建物の向きの指示は大学向きだったっていえるのかい Direction(s) of Buildings (1)
建物の向き (2)――建物の向きの指示は大学向きだったっていえるのかい Direction(s) of Buildings (2)
タンスをウィンドウ・シートに改造する Converting a Bureau to a Window Seat


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コバーンのマーク・トウェイン本 Mark Twain with Coburn's Photographs [作家の肖像]

アルヴィン・ラングドン・コバーンは、文学者たちの肖像写真(ポートレト)をたくさん撮っていて、1913年に Men of Mark (London: Duckworth)、1922年に More Men of Mark (London: Duckworth) という写真集を刊行しています。

  エズラ・パウンド Ezra Pound, 1885-1972 については、1922年の続篇のほうに、1916 年の渦巻主義の Vortograph ではなくてまともな(?)、でも1913年10月ロンドンのケンジントンで撮影したちょっとだけ古い写真を、載せています。――

Ezra_Pound(AlvinLangdonCoburn,1922).jpg
"III. Ezra Pound, Kensington, October 22nd, 1913," More Men of Mark (London: Duckworth, 1922)

  日本語のウィキペディア「エズラ・パウンド」が掲げている肖像です <http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%82%BA%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%91%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89>。東洋風な趣きで、もしかしてキモノかと思うとスティッチがあって、ローブかよみたいな。

  スティーグリッツの写真雑誌 Camera Work に掲載された写真なども再掲されているようです。

466px-Alvin_Langdon_Coburn-Rodin.jpg
Rodin, Camera Work, No. 21 (1908); "IX Auguste Rodin, Meudon, April 21st, 1906. " More Men of Mark (London: Duckworth, 1922) 

431px-Alvin_Langdon_Coburn-Shaw.jpg
Bernard Shaw, Camera Work, No. 21 (1908); "I. G. Bernard Shaw, Welwyn, August 1st, 1904. " More Men of Mark (London: Duckworth, 1922) 

  いずれも英語のWikipedia "Alvin Langdon Coburn" より。

  なんとなく目に留まった、2004年春に The Mark Twain House and Museum が催したコバーンの展覧会 <https://marktwainhouse.org/menofmark/aboutcoburn/> のリストを引けばつぎのようです。――

The Artists (画家):
Max Beerbohm
Frank Brangwyn
William De Morgan
Roger Fry
Henry Matisse
William Nicholson
William Orpen
Auguste Rodin
John Singer Sargent
Charles Shannon
Max Weber
Clarence H. White
Playrights (劇作家):
H. Granville Barker
J.M. Barrie
Arnold Bennett
John Galsworthy
John Masefield
George Bernard Shaw
Poets & Essaysts (詩人・エッセイスト):
Hilaire Belloc
Robert Bridges
Edward Carpenter
George Meredith
George Moore
Arthur Symons
Herbert Trench
William Butler Yeats
Novelists & Social Critics (小説家・社会批評家):
G.K. Chesterton
William Dean Howells
Henry James
Andrew Lang
Mark Twain
H. G. Wells
Politicians (政治家):
Theodore Roosevelt

  33人の分野の分類はアバウトな感じがありますし、最後のローズヴェルトひとりで politicians と複数にしているのもよくわからず、2冊の写真集のおよそ半分くらいだと思うのですが、なんとなく感じはわかると思い、写しました。

  で、なんでマーク・トウェイン・ハウスがこんな展覧会をやったかというと、展覧会のタイトルとしては "A. L Coburn's Men of Mark: Pioneers of Modernism" (A・L・コバーンの「著名人」――モダニズムの先駆者たち)ということで、アイルランドの詩人イェイツのケルトの薄明とか、バリーのピーター・パンの映画とか、世紀の変わり目の写真術とか、マーク・トウェインとセオドア・ローズヴェルト(詳細不明・・・・・・なんとかしてマーク・トウェインをモダニズムとつなげたい気持ちはうかがわれますが)とかいうふうに、「モダニズム」がらみの講演や映画上映があったようなのですが(プログラムについて<https://marktwainhouse.org/menofmark/programinfo/> 参照)、直接的には写真集以前の1910年に、アルヴィン・ラングドン・コバーン撮影の写真をちりばめたマーク・トウェインの評伝が出版されていたからだと思われます。

  マーク・トウェイン Mark Twain [Samuel Clemens] (1835年11月30日 - 1910年4月21日)がハレー彗星とともにこの世に生を受け、ハレー彗星とともに去っていったというのは有名な話ですが、アルヴィン・ラングドン・コバーン Alvin Langdon Coburn (1882年6月11日 - 1966年11月23日)は最晩年のマーク・トウェインの、白い服で有名な姿をなかなかじっくり撮影していたのでした。

  で、この本です。――

  Archibald Henderson (1877-1963).  With photographs by Alvin Langdon Coburn.  Mark Twain.  New York: Frederick A. Stokes, 1910.  230pp.

     例の Kessinger の復刻本もありますし、他にもペーパーのリプリントがあるみたいですが、どうせ写真はモノクロでしょうから、――あと、ケッシンガーも1年前に「March 16 プレフォルストの女見霊者、2冊 The Seeress of Prevorst [擬似科学周辺]」で書いた一件以来、あんまり信用していません、図版に関する限り――本物の本が手に入らないようならば、本当に本物の e-text でよかではなかとでしょうか〔カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校所蔵本〕。――<http://www.archive.org/stream/marktwainhenders00hendiala#page/n9/mode/2up>

  個人的には e-text のなかでも、Read-online のスタイルが気に入っています。pdf. のほうが鮮明でしょうが、重いですし、Kindle は・・・・・・金かかる(金取る)しめんどくさいw。7種類くらいe-text はあるのですが、ちゃんとコバーンの写真をツブサズ載せているのでした(また昔のことを思い出しましたけど、「November 26 メリーマウントのメイポールの挿絵について An Illustration of "The Maypole of Merry Mount" [本・読み物 reading books]」では挿絵の「カット」が判明しました。字も絵も大事だということがなんでわからないのでしょうか)。

  でも、この本については、Gutenberg が図版をスキャンして e-text 化していることがのちにわかりました〔Release Date: July 14, 2004 [EBook #6873]〕。――<http://ia301511.us.archive.org/3/items/marktwain06873gut/6873-h/6873-h.htm>

    でも、と逆接をつづけますが、結局、図版がどのようなかたちでどこに載っていたか、というのは、テクストの構成・組版が不明なのと同様に、グーテンベルク的な e-text 化ではわからんのですよね。あと、『あしながおじさん』で鮮明になったように、テクストの典拠が不明な場合が多いだけでなく、誤植・誤字を増幅している場合がままあります。

  やっぱり生身の本が好き。

  って、テーマはどこにw

AlvinLangdonCoburn-MarkTwain.jpg
Mark Twain, Stormfield, December 21st, 1908.

  この写真は1913年のMen of Mark (London: Duckworth) に所収のものです。1910年の伝記では、178ページと179ページのあいだ、第5章(最終章)"Philosopher, Moralist, Sociologist" (哲学者、道学者、社会学者)の冒頭に掲げられています <http://www.archive.org/stream/marktwainhenders00hendiala#page/n217/mode/2up>。

  本のほうは、写真に対してキャプションもテクストもなくて(サインはともかく "List of Illustrations" もない)、なんだかよくわからないのです。そーゆーのは著者と編集者の問題なんですかね。

frontpiece.jpg
Archibald Henderson, Mark Twain (New York: Frederick A. Stokes, 1910), frontispiece, image via Project Gutenberg <http://ia301511.us.archive.org/3/items/marktwain06873gut/6873-h/6873-h.htm>

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"National Portrait Gallery - Person - Alvin Langdon Coburn" <http://www.npg.org.uk/collections/search/person.php?LinkID=mp06800&role=art 〔12ページ、113枚のコバーン撮影(ないし撮影と推定される)肖像写真がありますが、残念ながら、8ページの途中からは currently unavailable です。でも大きい画面もあるし、おもしろい〕

"NYPL Digital Gallery | Results - Alvin Coburn" <http://digitalgallery.nypl.org/nypldigital/dgkeysearchresult.cfm?keyword=Alvin+Coburn> 〔2冊分全部載っているようです。すばらしい〕

 


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